輝線星(読み)きせんせい(英語表記)emission-line star

改訂新版 世界大百科事典 「輝線星」の意味・わかりやすい解説

輝線星 (きせんせい)
emission-line star

恒星スペクトル通常明るい連続スペクトルの上に,特定のイオン,原子分子による吸収線を示すが,星の中には吸収線が逆に明るい輝線に反転しているもの,あるいは吸収線の中央部または翼部に輝線成分を示すものがある。これらの星を総称して輝線星と呼ぶ。輝線としてもっとも一般に観測されるのは水素のバルマー線,とくにHα線,Hβ線である。スペクトルに輝線を生ずるのは主として星の光球外側に希薄な広がった星周圏circumstellar envelopeと呼ばれるガス圏が存在するためである。星周圏で散乱または再放出された光子は,吸収線に重畳して輝線成分を生ずる。輝線成分の強さや線輪郭は星周圏の発達の度合,圏内のガスの運動状態などによってきまる。輝線星は星の中では早期型(高温度)星と晩期型(低温度)星とに現れる傾向がある。前者にはウォルフ=ライエ星,はくちょう座P型星,輝線B型星,超巨星などがあり,なかでもはくちょう座P型星は流出型星周圏をもつ輝線星の典型となっている。晩期型では輝線M型星,長周期変光星,おうし座T型星などが知られている。また,爆発状態にあるフレア星新星なども輝線星の一種といえる。輝線の強さや輪郭は一般に時間変動を示すものが多く,それによって輝線星の表面活動や星周圏の変動,質量流出過程などを調べることができる。
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百科事典マイペディア 「輝線星」の意味・わかりやすい解説

輝線星【きせんせい】

スペクトル中の吸収線が輝線に反転していたり,吸収線の中央部や翼部に輝線成分が見られる恒星の総称。ふつうの星では吸収線は通常,明るい連続スペクトルの上の暗線となって表れる。スペクトル中に輝線が生じるのは,主として,星の光球の外側に希薄なガス圏(星周圏という)が存在するためで,もっとも一般的に観測されるのは水素のバルマー線。
→関連項目ウォルフ=ライエ星

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