運送業(読み)ウンソウギョウ(英語表記)transport industry

デジタル大辞泉 「運送業」の意味・読み・例文・類語

うんそう‐ぎょう〔‐ゲフ〕【運送業】

運賃または手数料を取って、旅客や貨物の運送をする営業

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精選版 日本国語大辞典 「運送業」の意味・読み・例文・類語

うんそう‐ぎょう ‥ゲフ【運送業】

〘名〙 運賃または手数料をとって旅客・貨物を運ぶ営業。〔英和商業新辞彙(1904)〕

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改訂新版 世界大百科事典 「運送業」の意味・わかりやすい解説

運送業 (うんそうぎょう)
transport industry

個人または法人が他人の需要にこたえ,交通手段を用いて運送サービスを提供する事業をいう。その中に,有償運送だけでなく無償運送を含めるかどうかは国によって異なり,日本では無償運送も運送業の中に含めている。運送業の中に関連事業を含めるかどうかによっても違いがみられ,その範囲は必ずしも明確とはいえない。代表的な分類は大別して次のようになる。なお,国鉄は1987年に分割・民営化してJR(旅客6社と貨物1社)となった。

(1)市場の範囲による分類

(a)国際運送 国際運送の代表的なものは,国際海運と国際航空である。国際海運の発達は19世紀に入ってからであり,旅客輸送においては移民船の就航から始まった。特にヨーロッパと北米・南米大陸間の輸送が中心であった。20世紀に入ると船舶の大型化が進み,豪華客船が大陸間を定期的に運航するようになった。一方,貨物輸送においては19世紀中葉から定期船が運航するようになり,国際貿易の拡大とともに成長していった。イギリスを中心とする欧米各国の国際海運会社が北大西洋航路を中心に東南アジア,太平洋航路に就航した。国際不定期船会社は羊毛,穀物,石炭,鉄鉱石などを中心として,19世紀から20世紀にかけて急速に増大するようになった。

 国際航空が始まったのは1920年代であるが,第2次世界大戦後航空機の発達によって急速に拡大し,特に60年代に入ってからは航空機のジェット化により大陸間無着陸飛行が可能になった。そのころから国際旅客輸送は客船から航空機に取って代わった。現在では発展途上国でも大半が国際航空企業をもつようになった。

(b)国内運送 国内運送は都市間運送と都市内(地域内)運送に分けられる。都市間旅客輸送においては鉄道,航空が主たるものであるが,最近では都市間バス輸送も増大するようになった。一方,都市間貨物輸送においては内航海運,鉄道(JR),トラック,航空が貨物輸送を行っており,日本の場合は内航海運とトラックによる輸送が多く,JRによる貨物輸送は減少傾向をたどっている。都市内旅客輸送においては,鉄道とバス,タクシーが中心であり,地方都市ではバス,タクシーに依存することが多い。以上のように19世紀以来の海運,鉄道に加えて,20世紀には自動車と航空機が普及し,それぞれの特性に応じて交通市場を形成している。

(2)交通手段による分類 運送業はそれが利用する交通手段によって分類するのが最も一般的であり,海運業,鉄道業,自動車運送業,航空運送業に分けられる。海運業はいうまでもなく,船舶を利用して運送業を営むものであり,国際海運業,内航(沿岸)海運業,国内定期客船業が中心である。1970年代になって発展した貨客船による長距離フェリーは国内定期客船業に分類されるが,貨物専用フェリーは内航海運業に分類される。鉄道業は幹線鉄道と都市鉄道などの地域的な鉄道に分けられ,そのうち幹線鉄道は,日本ではJR各社が経営している。JR以外の鉄道は公営地下鉄民営鉄道(大手私鉄15社,中小私鉄)から成る。鉄道業に類似的なものとして,ロープウェーのような索道がある。自動車運送事業は,旅客自動車運送事業貨物自動車運送事業に分けられ,旅客自動車運送事業は,さらに乗合自動車運送事業(定期バス,貸切バス)と乗用自動車運送事業(ハイヤー,タクシー)に分けられる。貨物自動車運送事業は特別積み合せを行うもの(定期便)とそれ以外(貸切トラック)に分けられる。航空運送事業は定期航空運送事業と不定期航空運送事業に分けられるが,日本の場合は両方を兼ねているものがほとんどである。それ以外に,利用航空運送事業があり,産業用(航空地図,農薬散布など)に利用されている。以上が交通手段別に分けた運送業であるが,それ以外に海運業に関連するものとして港湾運送事業(艀(はしけ)運送など),自動車運送事業に関連するものとしてトラック・ターミナル業,航空運送事業に関連するものとして航空代理店業などがある。

(3)経営形態による分類 運送業の経営形態は複雑多岐にわたっている。大別すれば,公企業形態と私企業形態に分けられる。日本で公企業形態をとっているものとしては,公共企業体public corporationとしての日本国有鉄道(国鉄)があった。国鉄は1906年発布の鉄道国有法によって大半の鉄道を国有化して以来,国有国営鉄道として全国鉄道(主として都市間鉄道)を経営してきたが,1949年に公共企業体(公社)に移行し,87年に分割・民営化されるまで続いた。現在でも公企業形態をとっている例は,公営交通(公営企業法による)である。地方公共団体が地下鉄やバス事業を経営しているのがそれであり,全国の主要都市で市(都)営交通として経営されている。公企業の中には入らないが,純然たる民営でもない特殊会社形態をとっているものもある。帝都高速度交通営団がそれである。特別法に基づいて設立されたもので,国と東京都が出資している。なお,日本航空株式会社も特別法に基づく特殊会社であったが,1987年に純粋の民営に移行した。以上のほかはすべて私企業形態であるが,純然たる私企業ではなく,政府の規制をうける政府規制産業regulated industriesである。俗に免許事業とよばれるものである。規制の強さは各産業ごとに違うが,このように政府から規制をうけるのは,運送業の公共的性格(公共性)によるものである。運送業がどのような経営形態をとるかは,各国が採用する政策によって異なっている。
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百科事典マイペディア 「運送業」の意味・わかりやすい解説

運送業【うんそうぎょう】

運賃または手数料を受けて旅客・貨物の運送を行う事業。運輸業ともいう。主な運送手段は,鉄道,自動車,船,航空機がある。日本の鉄道輸送は,旅客輸送の分野では自動車に次いで輸送量が多いが,貨物輸送の分野ではかつて陸上輸送の中心であった面影はない。しかし,長距離,大量輸送におけるエネルギー効率の良さが再び評価されている。自動車輸送は,日本の輸送体系の中で最も重要な地位にあり,旅客部門,貨物部門の両部門でトップに立っている。利点はドアトゥードアの輸送ができることにあるが,反面,公害などの問題もある。海運は,大量,定型輸送に適し,低コストだが機動性に劣る。日本の経済成長を支えるための膨大な物資輸送は,船舶が欠かせない。そのため邦船の競争力を回復する施策がとられている。航空輸送は,高速度,遠距離輸送に利用される。社会生活のスピードアップ,国際化,所得向上によるレジャー需要の増大,精密機械,機械部品,高級青果物などの物資の輸送で,航空輸送は急速に伸びている。1997年度国内貨物輸送量は5689億トンキロ,内訳はトラック53.8%,船舶41.7%,鉄道4.3%,航空0.2%。1997年度国内旅客輸送量は1兆4185億人キロ,内訳は乗用車60%,鉄道27.8%,バス6.6%,航空5.2%,船舶0.4%。→通運事業

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世界大百科事典(旧版)内の運送業の言及

【運賃】より

…したがって,いま同じ特定距離の克服に際しても,通常の水準を超える特別な速度,輸送設備,便宜等を求める場合には,運賃に加算してしばしば特定の料金chargeが徴収される。
[運送経営形態と運賃]
 今日の鉄道が,交通機関の3要素を結合して総合的な交通サービスを生産する代表的な交通機関であるとすれば,今日の高速(有料)自動車道は典型的な通路会社であり,また海上運送業,航空運送業および自動車運送業は典型的な狭義の交通サービスを生産する運送業である。これら狭義の運送業は一般に,私的運送業(者)private carrier,契約運送業contract carrierおよび公共運送業public carrierの3種の経営形態に分類される。…

※「運送業」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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