過ヨウ素酸(読み)カヨウソサン

化学辞典 第2版 「過ヨウ素酸」の解説

過ヨウ素酸
カヨウソサン
periodic acid

Iを含むオキソ酸nI2O7mH2Oを一般に,過ヨウ素酸という.ただし,IUPAC命名法では,HIO4のみを過ヨウ素酸といい,H5IO6オルト過ヨウ素酸という.【】過ヨウ素酸(periodic acid):HIO4(191.91).従来は,メタ過ヨウ素酸(metaperiodic acid)ともいわれた.オルト過ヨウ素酸H5IO6発煙硫酸-濃硫酸混合溶液で脱水するかH5IO6水溶液を100 ℃,12 mmHg で減圧乾こすると得られる.結晶は,正八面体型のIO6が稜を共有した一次元鎖状の構造である.100 ℃ で昇華,138 ℃ で分解する(H2O,O2 を失い,ヨウ素酸HIO3,さらに五酸化二ヨウ素I2O5となる).水溶液中では,IO4(正四面体)を生じるが,ほかの溶存種H5IO6などとの平衡が成り立っている.強酸化剤として用いられる.[CAS 13444-71-8]【】オルト過ヨウ素酸(orthoperiodic acid):H5IO6(227.95).従来,パラ過ヨウ素酸ともよばれた.遊離酸はメタ酸よりもこちらのほうが安定である.HIO3水溶液の電解酸化,またはBa(IO4)2と濃硫酸との反応で得られる.無色単斜晶系,潮解性の結晶.構造はI原子を中心とする[OI(OH)5]の八面体で,I-O1.78 Å,I-OH1.89 Å.密度3.39 g cm-3融点122 ℃.130~140 ℃ で分解する.水に易溶(112 g/100 g(25 ℃)).弱酸で,K1 5.1×10-4K2 3.9×10-9K3 2.5×10-12.水溶液中には,IO65-,[HnIO6](5-n)-,IO4,[IO2(OH)4],[IO3(OH)3]2-,[(HO)IO3(μ-O)2IO3(OH)]4- などの溶存種が存在し,温度,pH などによって平衡は移動する.したがって,水溶液を乾こすると,室温ではH5IO6が得られるが,80 ℃ ではH4I2O9[CAS 14922-00-0],100 ℃ 減圧乾こではHIO4,120 ℃ ではH7I3O14[CAS 62974-43-0]が得られる.過ヨウ素酸は酸化性が強く,ハロゲン化水素をハロゲン単体に,P,As,Zn,Feを酸化物に,Mn2+ をMnO4に酸化する.有機物も1,2-ジオールの炭素鎖をその間で切断する作用があり,選択的酸化剤として有機合成に利用される.そのほか,分析試薬としてカリウム定量に用いられる.[CAS 10450-60-9]【】上記のほか,従来,メソ過ヨウ素酸塩とよばれたM3IO5や,1分子中にI原子を複数個含む,K4I2O9,H7I3O14のようなイソポリ酸(塩)が知られている.さらに Mo,Wなどとの間に,H5[I(MoO4)6],[I(WO4)6]5-,[IO2(MoO4)4]5- などのヘテロポリ酸(塩)も形成する.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「過ヨウ素酸」の意味・わかりやすい解説

過ヨウ素酸
かヨウそさん
periodic acid

(1) オルト過ヨウ素酸  H5IO6吸湿性の無色結晶。融点 122℃,130~140℃で分解し,酸素を発生する。水,アルコールに易溶。過塩素酸に比べると酸性ははるかに弱い。分析用試薬で,ある種の有機化合物を選択的に酸化する酸化剤として実験室で使用される。 (2) メタ過ヨウ素酸  HIO4 。過ヨウ素酸は通常これをさす。オルト過ヨウ素酸を真空から 12mmHgで 100℃に熱すると生成する。吸湿性。

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