(読み)カ

デジタル大辞泉 「過」の意味・読み・例文・類語

か【過】[漢字項目]

[音](クヮ)(呉)(漢) [訓]すぎる すごす あやまつ あやまち よぎる
学習漢字]5年
通りすぎる。「過客過程過渡一過経過通過濾過ろか
時間がたつ。すぎ去る。「過去過日過般過年度
事態をそのままにしてすごす。「看過黙過
ある範囲や基準をこえる。「過激過酷過剰過度過半過分過不足超過
あやまつ。あやまち。「過誤過失罪過大過

か〔クワ〕【過】

[接頭]化学で、標準となるものの原子価で表されているよりも、多い割合で元素が結合していることを示す。「酸化物」「塩素酸」「マンガン酸カリウム」

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「過」の意味・読み・例文・類語

す・ぎる【過】

〘自ガ上一〙 す・ぐ 〘自ガ上二〙
[一] 人、物、時などが近づいて来て、または、そこを通って、向こうへ去って行く。
① ある場所、ある道筋を通って、その先へ行く。通過する。
古事記(712)中・歌謡「新治 筑波を須疑(スギ)て 幾夜か寝つる」
② ある物、場所の近くを通って、そこから離れ去って行く。
※万葉(8C後)一五・三六〇六「玉藻刈る処女(をとめ)を須疑(スギ)て夏草の野島が崎にいほりすわれは」
③ 日時、年月が移って行く。経過する。
※万葉(8C後)一五・三六八八「時も須疑(スギ) 月も経ぬれば 今日か来む 明日かも来むと」
④ (他動詞的に用いて) 日を暮らす。また、生計を立てる。
※宇治拾遺(1221頃)一「それにその金をこひて、たへがたからむ折は、売りてすぎよ」
日葡辞書(1603‐04)「ミヲ suguru(スグル)。または、イノチヲ suguru(スグル)
[二] 物事が盛んな状態から、衰退・消滅・終了の状態へと進んで行く。
① 盛りを経て衰えて行く。
※万葉(8C後)一七・三九一七「ほととぎす夜声なつかし網ささば花は須具(スグ)とも離(か)れずか鳴かむ」
※源氏(1001‐14頃)若紫「京の花さかりはみなすぎにけり」
② 物事が終わりになる。すむ。
※蜻蛉(974頃)上「いみもすぎぬれば、京にいでぬ」
③ ある気持などが消えてなくなる。
※万葉(8C後)二・一九九「嘆きも いまだ過(すぎ)ぬに 憶(おも)ひも いまだ尽きねば」
④ 死ぬ。
※万葉(8C後)一・四七「ま草刈る荒野にはあれど黄葉(もみちば)の過(すぎ)にし君が形見とそ来し」
※咄本・都鄙談語(1773)時宜「隠居が逝(スギ)られ、追つけ葬礼を出す支度」
[三] 物事が、ある数量や程度を越える。
① ある数量や程度を比べて、それ以上になる。まさる。→過ぎない
※万葉(8C後)一七・四〇一一「近くあらば いま二日だみ 遠くあらば 七日のをちは 須疑(スギ)めやも」
※平家(13C前)三「子に過たる宝なしとて」
② 適当な度合を越える。
(イ) その人の身分・地位や、その場所の様子などにふさわしくないほど、物事の度合が高くなる。分を越える。過分になる。
古今(905‐914)仮名序「よろこび身にすぎ、たのしび心にあまり」
※日葡辞書(1603‐04)「ブンニ suguita(スギタ) キルモノヂャ」
(ロ) 物事が適当な度合を越える。過度になる。動詞連用形や形容詞・形容動詞の語幹に付けて用いることも多い。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九「已に衰へ邁(スギ)老い耄(ほ)れ」
※源氏(1001‐14頃)帚木「ものむつかしげにふとりすぎ」

すご・す【過】

〘他サ五(四)〙
① 日時、年月が移って行くのに任せる。時を経過させる。すぐす。
※竹取(9C末‐10C初)「さきざきも申さんとおもひしかども、必ず心まどはし給はん物ぞと思ひて、今まですごし侍りつる也」
※堤中納言(11C中‐13C頃)はいずみ「ここなる人のわづらひければ折あしかるべし。〈略〉このほどをすごして迎へ奉らむ」
② この世に生きて暮らす。また、生計を立てる。すぐす。
※源氏(1001‐14頃)若紫「夕暮となれば、いみじくくし給へば、かくてはいかですごし給はむと泣く」
※日葡辞書(1603‐04)「イノチヲ sugosu(スゴス)〈訳〉生活をする」
③ 生活のめんどうをみる。養う。すぐす。
※御伽草子・蛤の草紙(室町末)「よろづの営みをして母をすごさんために」
※浮世草子・日本永代蔵(1688)六「壱人のはたらきにて大勢をすごすは、町人にても大かたならぬ出世」
④ そばを通過させる。通り過ぎるのを待つ。やりすごす。すぐす。
※宇治拾遺(1221頃)一一「さきに出たれば、すこしたてて、太刀をぬきて打ければ」
⑤ そのままにしておく。うちすてておく。すぐす。
※万葉(8C後)一四・三五六四「小菅ろの浦吹く風の何(あ)ど為為(すす)か愛(かな)しけ児ろを思ひ須吾左(スゴサ)む」
※夜の寝覚(1045‐68頃)一「ふりはなれてながめ侍つる月影のすごしがたさを、折うれしう」
⑥ 盛りの時期を過ぎさせる。また、人が年をとる。すぐす。
※増鏡(1368‐76頃)一三「久我の少将通宣、いたくすごしたる程にて、ひげがちにねび給へるかたちして」
⑦ 物事の終わるのを待つ。また、物事をすませる。すぐす。
※蜻蛉(974頃)中「えさらず思ふべき産屋のこともあるを、これすごすべしと思ひて」
⑧ 適当な度合を超えさせる。動詞の連用形に付けて用いることが多い。すぐす。
※夜の寝覚(1045‐68頃)二「日たくるまで御殿籠りすこしたれば、人目もいとやすし」
※少年行(1907)〈中村星湖〉一六「勉強を過して体を壊すなとか」
⑨ 特に、酒を過度に飲む。また、単に酒を飲む。
※仮名草子・身の鏡(1659)中「上戸の曲として、かならずすごすと見えたり」
西洋道中膝栗毛(1870‐76)〈仮名垣魯文〉一一「そんなことは後目にしてマアマア一杯すごしなせへ」
⑩ 過失を犯す。すぐす。
極楽寺殿御消息(13C中)第九三条「すこしたる事にてもあれ、又ふりょの事にてもあれ、なげかしき事のいできたらんをも」
※幸若・景清(寛永版)(室町末‐近世初)「それがしがすごしたるとがはなけれども」
[語誌](1)上代では「すぐす」が普通で、「すごす」は⑤の挙例「万葉集」の東歌に見られる「思ひすごす」の例だけである。平安時代頃から次第に「すごす」が併用されるようになり、室町時代以降は「すごす」の方が普通の形となった。
(2)意味は両者共通している点が多いが、「すごす」には⑨のような新しい意味が現われている。

すぐ・す【過】

〘他サ四〙
① 日時、年月が移って行くのに任せる。時を経過させる。すごす。
※万葉(8C後)一〇・二二一八「一年にふたたび行かぬ秋山を情(こころ)に飽かず過之(すぐシ)つるかも」
② この世に生きて暮らす。生命を保つ。また、生計を立てる。すごす。
※後撰(951‐953頃)雑二・一一七五「春やこし秋やゆきけんおぼつかな影の朽木と世をすぐす身は〈閑院〉」
③ 生活の面倒を見る。養う。すごす。
洒落本・仕懸文庫(1791)四「名まへ出居衆で亭主をすくすのか」
④ そばを通過させる。通り過ぎるのを待つ。やりすごす。
落窪(10C後)二「牛弱げに侍れば、えさきに上り侍らじ。かたはらに引きやりて、此御車をすぐせ」
⑤ そのままにしておく。うちすてておく。すごす。
※万葉(8C後)一三・三二七二「思ふそら くるしきものを なげくそら 過之(すぐシ)得ぬものを」
⑥ 盛りの時期を過ぎさせる。また、人が年をとる。すごす。
※万葉(8C後)二〇・四三一八「秋の野に露負へる萩を手折らずてあたら盛りを須具之(スグシ)てむとか」
⑦ 物事の終わるのを待つ。また、物事をすませる。すごす。
大和(947‐957頃)九四「御いみなどすぐしては、つひにひとりはすぐし給まじかりければ」
⑧ 物事の程度をふつう以上にすぐれさせる。
※源氏(1001‐14頃)明石「さうのこと取りかへてたまはせたり。げにいとすぐしてかい弾きたり」
⑨ 適当な度合を越えさせる。動詞の連用形につけて用いることが多い。すごす。
※源氏(1001‐14頃)桐壺「ある時には大殿ごもりすぐして、やがてさぶらはせ給ひなど」
⑩ 過失を犯す。あやまつ。すごす。
※宇治拾遺(1221頃)一〇「左の大臣は、すぐしたる事もなきに、かかるよこざまの罪にあたるをおぼしなげきて」

クヮ【過】

[1] 〘名〙
① あやまち。しそこない。
令義解(718)考課「皆具録一年功過行能〈謂。〈略〉職事修理為功。公務廃闕為過〉」
② 過去。
愚管抄(1220)七「冥顕、首尾、始中終、過現当、いささかも事の道理にかなふみち侍りなんや」
③ (形動) 度を越えること。過度。また、分に過ぎたこと。過分。
※玉塵抄(1563)一四「徐鯤魚と云者あり。〈略〉性がをごってくゎな者なりぞ」
④ 実際よりおおげさなこと。物事を実質以上に思わせるようなこと。
※虎明本狂言・粟田口(室町末‐近世初)「きゃつがきくやうにくゎをいはふと云」
[2] 〘接頭〙
① 化学で、標準または普通の原子価関係よりも多い割合で、元素が結合していることを表わす。「過硫酸」「過酸化物」など。
② 度が過ぎていることを表わす。「過保護」など。

よぎ・る【過】

[1] 〘自ラ五(四)〙 (古くは「よきる」)
① 前を通りすぎる。通過する。通りこす。
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)九「空沢の中の深く険しき処に過(ヨキリ)ぬ」
カールスバートにて(1967)〈柏原兵三〉「降りる駅を間違えたのではないかという不安が私の心をよぎった」
② 通りすがりに立ち寄る。
※書紀(720)雄略二三年八月(前田本訓)「行きて吉備国に至て家に過(ヨきル)
[2] 〘他ラ五(四)〙
① さえぎる。
※太平記(14C後)二一「自国他国の兵共、道を塞ぎ前を要(ヨギッ)て、此(ここ)に待彼(かしこ)に来り討んとす」
② よける。避ける。
※浄瑠璃・菅原伝授手習鑑(1746)三「商人旅人も道をよぎる」

すぎ【過】

[1] 〘名〙 時刻を通りこしていることをいう。
※実隆公記‐明応五年(1496)七月紙背(女房奉書)「さ候はは四のちとすきにしこう候やうにおほせられ候へく候」
[2] 〘語素〙
① 時間、年齢など数を表わす語に付いてそれをすでに通りこしていることを表わす。
※御湯殿上日記‐文明九年(1477)正月一八日「ひるすきほとにあか松、たけたとりあいのしさいありて」
※引越やつれ(1947)〈井伏鱒二〉牛込鶴巻町「をばさんは四十ちょっとすぎくらゐの年頃で」
② 動詞の連用形に付いて、その程度が度をこしてはなはだしいさまを表わす。「言いすぎ」「食いすぎ」「飲みすぎ」など。
※錦繍段抄(1530頃)「梅は痩せすき、桃は肥へすきたり」

すぐ・る【過】

〘自ラ四〙 (上二段活用の動詞「すぐ(過)」の四段形) 通り過ぎる。また、程度があるもの以上になる。
※万葉(8C後)一三・三三〇九「思へこそ 歳の八年(やとせ)を 切り髪の よちこを過ぎ 橘の 末枝(ほつえ)を須具里(スグリ) この川の 下にも長く 汝が心待て」
[語誌]他動詞「すぐす(過)」と対応する。原形は「すぐ(過)」で、これから派生したものであるが、中古以後衰退した。中古以後現われる下二段活用の「すぐる(優)」との関連が考えられる。

そ・す【過】

〘他サ四〙 (動詞の連用形に付けて、補助動詞のように用いる) その動作を度を過ごして熱心にする意を表わす。しきりに…する。…しすぎる。
※蜻蛉(974頃)中「三十日三十夜は我もとにとはむといへば、〈略〉年ごとにあまればこふる君がためうるふ月をばおくにやあるらん とあれば、いはひそしつとおもふ」
※源氏(1001‐14頃)帚木「かしこく教へたつるかなと思ひ給へて、我だけく言ひそし侍るに」

すぐ【過】

動詞「すぐ(過)」の連用形「すぎ」の上代東国方言。
※万葉(8C後)二〇・四三七八「月日(つくひ)よは須具(スグ)は行けども母父(あもしし)が玉の姿は忘れせなふも」

す・ぐ【過】

〘自ガ上二〙 ⇒すぎる(過)

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