道義的責任論(読み)どうぎてきせきにんろん

世界大百科事典(旧版)内の道義的責任論の言及

【刑法理論】より


[後期旧派]
 前期旧派の刑法理論は,19世紀中ごろ以降,とくにドイツを中心にして後期旧派的な刑法理論へと変容する。そこでは,観念論哲学を基礎に形而上学的な道義的責任論と道義的応報刑論が強調されるようになった(カント,ヘーゲル)。やがて,ドイツ第二帝国(ビスマルク帝国)の成立を背景に,日本でこれまで通常〈旧派〉(古典派)と呼ばれてきた後期旧派が形成されたのである。…

【責任】より

…具体的にいえば,たとえば,他人所有の物をこわした者は,民事責任としては,故意・過失を問わず,生じた損害相当額の賠償を被害者になすことが要求され,それで足りるが,これと別個に問われる刑事責任としては,故意の場合で,かつ被害者の告訴があることを前提に,器物損壊罪として3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料が予定され,その範囲内で裁判所が裁量により,被害額を含む諸般の事情にかんがみ,適当と思われる刑を科し,あるいは場合によっては,刑の執行を猶予したりするのである。このような性格をもった刑事責任がいかなる根拠・見地からとらえられるべきかということについては,犯罪を行ったこと自体に対する社会倫理的非難という意味で応報的見地から考えるべきであるとする道義的責任論と,犯罪を行ったことに示される犯罪者の社会的危険性に着目し,その再犯防止という予防・教育目的から考えるべきだとする社会的責任論との根本的な理論的対立がある。現在では,両者いずれの観点も否定しきれないとして,互いに接近する傾向がみられるが,基本的な立場の差の終局的解消の見込みはなお見いだしがたい。…

※「道義的責任論」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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