遠隔操作事件(読み)えんかくそうさじけん

知恵蔵 「遠隔操作事件」の解説

遠隔操作事件

第三者他人のパソコンを不正に遠隔操作し、犯罪予告を行った事件。2012年の6月から9月にかけて、インターネット上の掲示板や、官公庁のホームページ上に、襲撃破壊、大量殺人などの犯行予告が行われ、事件に関与したと思われる数名が逮捕された。しかし、その後、全ての逮捕者が、何者かに自分のパソコンを遠隔操作されたり、自分が意図しない書き込みへと誘導されてあたかも自らが犯行予告を行ったように見せかけられたりしていたことが判明し、警察誤認逮捕も問題となった。
目の前にあるパソコンから、他のパソコンを操作するソフトウエアはたくさんあり、Windows7や8にも、「リモートデスクトップ」という遠隔操作機能が用意されている。これらのソフトウエアや機能は、自分のパソコンを自宅以外から操作したい場合や、離れた場所にある他人のパソコンでトラブル等があった際に、別の場所から操作するために利用することを目的としている。しかし、今回の事件では、誤認逮捕された人々は、内部に遠隔操作プログラムが仕掛けられていたソフトウエアを知らずに利用したことや、CSRF(Cross Site Request Forgeries)の被害にあっていたことなどから、本人の了解なしで、外部からパソコンを操作されていたことになる。なお、CSRFとは、ウェブサイト上の投稿時や商品の購入際時などで、本人が知らないうちに、他のサイトへ誘導され、意図しない掲示板への書き込みなどの行為が行われる攻撃である。
この事件に関与したとして、威力業務妨害などの罪に問われていた片山祐輔被告は、一旦保釈され、無実を訴えていたが、14年5月19日、弁護団に「自分が犯人です」と電話をして、事件についての関与を認めた。同被告は、遠隔操作に使用したトロイの木馬型ウイルスソフト「iesys.exe」を自宅のパソコンで作成し、その後、改造を重ねたということだ。

(横田一輝  ICTディレクター / 2014年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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