還元的脱離(読み)カンゲンテキダツリ

化学辞典 第2版 「還元的脱離」の解説

還元的脱離
カンゲンテキダツリ
reductive elimination

金属に結合した二つの基がカップリングして,金属から脱離する反応において,金属の形式的な酸化数が減少する反応.たとえば,ジアルキル遷移金属化合物MR2Ln(M = 遷移金属,R = アルキル基,L = 配位子)は,一般に熱的に不安定であり,この化合物を加熱すると次式に示す反応により二つのM-R結合が切断され,二つのR基がカップリングしてR-Rが生成する場合がある.

MR2Ln → MLn + R-R

この反応は還元的脱離反応の代表的な例であり,遷移金属Mは反応の前においては形式的に二価であるが反応後は0価になる.還元的脱離反応としては,そのほかに下に示すような例がある.

    MH(COR)Ln → MLn + RCHO

    MH(R)Ln → MLn + RH

還元的脱離の逆が酸化的付加であるが,多くの触媒反応の素反応が酸化的付加と還元的脱離によって説明されるようになった.[別用語参照]酸化的付加反応

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

世界大百科事典(旧版)内の還元的脱離の言及

【触媒】より

… 一方,ヨウ化水素を助触媒とするロジウム錯体には,酢酸溶液中メチルアルコールと一酸化炭素を反応させ酢酸を合成する触媒作用がある。溶液中に平衡的に生じるヨウ化メチルがロジウム錯体に解離付加(酸化的付加という)し,別に配位した一酸化炭素がメチル配位子と反応(配位子挿入という)してアセチル配位子になり,それがヨウ化物イオンとともに脱離(還元的脱離という)し,加水分解を受けてヨウ化水素を再生するとともに酢酸を生成するという,触媒反応サイクルを構成している。触媒反応の機構は多くの場合複雑で,よくわかっていない場合が少なくない。…

※「還元的脱離」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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