郡政所(読み)ぐんまんどころ

改訂新版 世界大百科事典 「郡政所」の意味・わかりやすい解説

郡政所 (ぐんまんどころ)

郡の地頭が領内統治のために設けた役所。鎌倉時代,北条氏,足利氏などの地頭・御家人は全国各地に所領をもち,その統治のため,領内に役所を設けた。いわゆる地頭政所である。地頭政所は荘園・郷・保などとならんで,郡にも置かれることがあった。これをとくに郡政所と呼ぶ。北条氏所領では,陸奥国津軽平賀郡・田舎(いなか)郡・山辺郡,北条氏一門の金沢氏の所領では,伊予国久米郡などの事例が知られる。室町期の1459年(長禄3)のころ,高師長の知行となっていた三河国額田郡政所職も,鎌倉期以来のものと考えられる。額田郡の地頭足利氏の意をうけて,その被官の高一族が政所の実務を担当したものであろう。額田郡には同時に,郡公文所(ぐんくもんじよ)も存在したことが知られる。また北条氏所領陸奥国津軽平賀郡のばあいには,政所綿貫入道が郡内の郷・村に下部(しもべ)(使者)を派遣して,年貢徴収田畠の管理などに当たっていた。郷・村の地頭代官となっている北条氏被官よりも上位の立場にあって,それを監督・統制すべき役割を,政所がはたしていたことが知られる。なお,平賀郡には政所とならんで検非違所もあった。郡内の治安・警察を担当する役所たることはいうまでもない。

 室町期以降においても,郡政所の重要性は失われず,戦国大名の領国支配の機関として利用された事例も知られる。九州の大名大友氏の領国筑前における,志摩郡政所がそれである。豊後国における安岐あき)・国東両郷政所,山香郷やまがのごう)両政所なども,同様な存在と考えられる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android