部族法(読み)ぶぞくほう(英語表記)Volksrechte; Stammesrechte; leges barbarorum

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「部族法」の意味・わかりやすい解説

部族法
ぶぞくほう
Volksrechte; Stammesrechte; leges barbarorum

一般にゲルマンの諸部族法をさすが,特に5世紀なかば以降に成立した成文法である部族法典のみをさす場合もある。部族法の特色は属人法主義にある。ゲルマン諸部族は民族移動による部族国家成立後も,たとえばフランク王国のなかにサリカ法典リブアリア法典があったように部族固有の法を維持した。部族法は国王による一方的立法ではなく,王と人民の間の協定として成立し,状況に応じ修正法典が作られた。内容的には刑法,裁判手続,相続法が主で,ローマ法やキリスト教思想の影響がみられる。最後の立法はカルル大帝がアーヘン議会で行なった 803年の立法命令である。

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世界大百科事典(旧版)内の部族法の言及

【属人法主義】より

…フランク王国の時代においては各人はその属する部族の法に従って生活しており,相異なる部族の者との間の法的紛争においては各自の属する部族の法を明らかにする〈法の宣言〉により問題が解決されていた。これがいわゆる部族法時代であり,人の属する法に従っていたので属人法主義の時代とよばれる。その後は部族の法ではなくいずれかの領域の法が中心となり,この意味での属人法主義は消滅したが,人種・宗教等により法を異にする人的集団の間の法抵触については人際法の形でその影響が残存している。…

【未開法】より

…〈未開法〉が西欧慣習法と本質的に異なるという論拠はない。このような反省から,1960年代以降は〈未開法〉の代りに〈部族法tribal law〉とか〈現地住民の法native law〉,あるいは〈民俗法folk law〉という呼び方が一般化してきた。 部族社会tribal societyの法は,形式と運用の面で特色があり,西欧諸国の制定法とたしかに差異がある。…

※「部族法」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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