都の春(読み)みやこのはる

改訂新版 世界大百科事典 「都の春」の意味・わかりやすい解説

都の春 (みやこのはる)

箏曲曲名。3世山勢松韻(1845-1908)が,1890年東京音楽学校(現,東京芸術大学音楽学部)の新築開校式のために作曲山田流奥手事物。作詞鍋島直大(なおひろ)で,都の春景色にことよせて,明治という新時代を賛美し,同校の前途を祝している。山田流の歌物とは違って,むしろ地歌の手事物形式を使用し,器楽的技法を重視した手法特色をもたせている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「都の春」の意味・わかりやすい解説

都の春
みやこのはる

山田流箏曲の曲名。奥手事曲。1世山勢松韻作曲。 1890年の東京音楽学校の校舎落成式に開曲され,人気を博した。作曲には長瀬勝男一櫛田栄清の協力があったと伝えられる。作詞は佐賀藩主をつとめた鍋島直大。都の春の景観にこと寄せて,君が世の発展を祝う内容。構成は前弾き-前歌-合の手-中歌-手事-後歌。前弾きには山田検校作曲『あづまの花』の前弾き,合の手には松浦検校作曲『深夜の月』の手事の一部,手事には『残月』の旋律が使われている。スクイ爪やハジキなどの技法が駆使され,歌物中心の山田流箏曲にあって,器楽性の強いはなやかな曲として知られる。箏は半雲井調子から四上り平調子。三弦は本調子から二上り。山田流の曲であるが,例外的に三弦に鉛駒 (台広駒) を用いる。

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