都市のスポンジ化(読み)としのすぽんじか

知恵蔵 「都市のスポンジ化」の解説

都市のスポンジ化

都市内部空き地空き家がランダムに数多く発生し、多数の小さな穴を持つスポンジのように都市の密度低下すること。都市のスポンジ化の進展は、サービス産業の生産性の低下や行政サービスの非効率化、地域コミュニティーの存続危機、治安景観悪化などにつながり、都市の衰退を招く恐れがあると懸念されている。
日本では、多くの都市で空き地・空き家が増加している。国土交通省の2013年の調査によれば、空き家数は5年前よりも8.3%増加し、820万戸と過去最高を記録した。相続などにより取得された住宅が、当面の必要性がないことなどから使われずに空き家になっているケースが多い。空き地面積も5年前より28%増加し、特に個人所有の空き地が大幅に増加した。また、中心市街地では商店街の空き店舗や空き地が多くみられ、商店街への調査によれば、約4割の商店街が、空き店舗率が10%を超えるシャッター商店街となっている。このような都市の中心部のみならず、都市の郊外でも空き家が増加しており、都市のスポンジ化といえる状況がみられる。
人口減少下における都市政策として、一定区域生活に必要な機能を集中させて利便性を高めるコンパクトシティーが進められているが、都市のスポンジ化はコンパクトシティーによる効果を減少させるとして問題視されている。国土交通省は2017年2月に、都市のスポンジ化への対応などを検討課題とする都市計画基本問題小委員会を設置し、現に生じている課題の把握整理や対応策の検討などに乗り出した。

(原田英美 ライター/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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