配置間相互作用(読み)ハイチカンソウゴサヨウ

化学辞典 第2版 「配置間相互作用」の解説

配置間相互作用
ハイチカンソウゴサヨウ
configuration interaction

略称CI.原子または分子内の電子配置間に生じる相互作用LCAO近似により分子の電子状態を求める分子軌道法(MO法)において,しばしば用いられる近似一種である.たとえば,水素分子の場合,2個の原子軌道χAχB とすれば,LCAO近似による分子軌道(MO)は,結合軌道

と反結合軌道

の二つになる.水素分子の基底状態を,ψ のMOに2個の電子が入ったとして表せば,

ΨLCAOψ(1)ψ(2)

のようになるが(図(a)の配置),これは実際とは合わない.その理由は,展開してみればわかるように,

  ΨLCAOλ1{χA(1)χB(2) + χA(2)χB(1)}

      + λ2{χA(1)χA(2) + χB(1)χB(2)}

となって(ただし,λ1λ2 はともに1/2である),2個の電子が同時に一方の原子に集まったイオン構造の寄与が大きすぎるためである.実状に合わすためには,計数 λ1λ2 をかえてイオン構造の寄与を適当な大きさにすればよい.その結果,よりよい基底状態の波動関数は次の形になる.

すなわち,Ψは ΨLCAO に図(b)の電子配置を取り入れたことに対応している.すなわち,電子配置(a)と電子配置(b)の相互作用の結果として,イオン構造の是正が行われている.このように,いくつかの電子配置間の相互作用を考慮することにより,原子または分子の定常状態に対する近似が高められる.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「配置間相互作用」の意味・わかりやすい解説

配置間相互作用
はいちかんそうごさよう
configuration interaction

多粒子系を一体近似で解いて1つの電子配置のみを用いた場合,電子の相関を十分に取入れていないため,複数個の電子配置の重ね合せを用いる。これは,電子配置間に相互作用が生じたと考えることができ,これを配置間相互作用という。実際に応用する場合には,一体近似で求めた基底状態の電子配置の波動関数に,電子をいくつか移してできる励起状態の電子配置の波動関数をまぜ,全エネルギーが最小になるようにする。比較的簡単な原子や分子については,数個の電子配置を考えるだけで有効なことがある。

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世界大百科事典(旧版)内の配置間相互作用の言及

【分子軌道法】より

…分子軌道法では,その出発点において,電子間の反発の効果が取り込まれていないために,このような結果になるのである。上述の欠点を克服するには,Φg(1)Φg(2)なる基底電子配置と,Φg(1)Φu(2),Φu(1)Φg(2),Φu(1)Φu(2)などの励起電子配置の混ざり合い(配置間相互作用)を考慮する方法がとられる。核外電子の相互作用の影響を電子が感ずるポテンシャルの中に取り入れる方法に自己無撞着場の方法があるが,その方法を用いて分子軌道を計算したうえで,配置間相互作用を十分に取り入れた計算を行うと,経験的な数値をまったく用いることなしに,信頼度の高い計算結果を得ることができる。…

※「配置間相互作用」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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