酢酸ビニル(読み)サクサンビニル(英語表記)vinyl acetate

デジタル大辞泉 「酢酸ビニル」の意味・読み・例文・類語

さくさん‐ビニル【酢酸ビニル】

エチレン酢酸から合成される甘味臭のある無色液体アセチレン酢酸反応により合成される。酢酸ビニル樹脂ビニロンなどの原料ビニルアセテート化学式CH2=CHOCOCH3

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精選版 日本国語大辞典 「酢酸ビニル」の意味・読み・例文・類語

さくさん‐ビニル【酢酸ビニル】

〘名〙 (ビニルはvinyl) 酢酸ビニル樹脂の合成原料。化学式 CH3COOCH=CH2 甘味臭のある無色の液体。アセチレンと酢酸の気相反応によって合成される。乳化重合により熱可塑性合成樹脂として、接着剤ペイントチューインガムベースなどに用いられる。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「酢酸ビニル」の意味・わかりやすい解説

酢酸ビニル
さくさんびにる
vinyl acetate

ビニルアルコール(CH2=CHOH)の酢酸エステルに相当する化合物。ビニルアルコールはアセトアルデヒドの互変異性体であり、遊離の形では存在しない。以前は、亜鉛水銀などの金属塩を触媒としてアセチレンに酢酸を付加させる方法により工業的に製造されていたが、現在ではアセチレンを原料とする方法はコストが高くつくのでほとんど行われなくなり、1960年代から酢酸とエチレンを原料とする製造法が主流になっている。この方法では、酢酸パラジウムなどの触媒を用いて、酸素によるエチレンの酸化と酢酸によるエステル化を1段階の反応で行い、95%以上の高い収率で酢酸ビニルを合成している。無色の液体。過酸化物、光により重合させるとポリ酢酸ビニルができる。重合物は、通常は酢酸ビニル樹脂とよばれ、塗料、接着剤、製紙用サイズ、チューインガムのベースなどに使われている。ポリビニルアルコールを合成する原料として重要である。

[廣田 穰]

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化学辞典 第2版 「酢酸ビニル」の解説

酢酸ビニル
サクサンビニル
vinyl acetate

C4H6O2(86.09).CH2=CHOCOCH3.工業的には,かつては水銀(Ⅱ)触媒を用いてアセチレンと酢酸との反応で合成されていたが,現在ではすべて酸素の共存下でエテンと酢酸との反応で製造されている.

CH2=CHOCOCH3 + H2O   

パラジウム触媒を用いる気相法(100~200 ℃)と塩化パラジウム触媒を用いる液相法とがあるが,気相法が主力である.甘い特異臭のある無色の液体.融点-93 ℃,沸点73 ℃.0.932.1.3950.エタノールエーテルに可溶.ポリ(酢酸ビニル)(酢酸ビニル樹脂)の単量体で,合成繊維ビニロンの中間原料として用いられる.[CAS 108-05-4]

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百科事典マイペディア 「酢酸ビニル」の意味・わかりやすい解説

酢酸ビニル【さくさんビニル】

化学式はCH2=CHOCOCH3。特異なエステル臭のある無色の液体。融点−84℃,沸点73℃。多くの有機溶剤に可溶,水に微溶。工業的には酸素の共存下エチレンと酢酸との反応によって製造する。酢酸ビニル樹脂などの原料として重要である。
→関連項目ポリビニルアルコール

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酢酸ビニル」の意味・わかりやすい解説

酢酸ビニル
さくさんビニル
vinyl acetate

化学式 CH2=CH・OCOCH3 。アセチレンに酢酸を付加して合成される甘い香りのある無色液体。エチレン,酢酸,空気をパラジウム触媒上に通じて製造される。沸点 73℃。 20℃で水 100mlに 2.5ml溶ける。高濃度の気体は麻酔性の毒性を示す。酢酸ビニル樹脂の原料。

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改訂新版 世界大百科事典 「酢酸ビニル」の意味・わかりやすい解説

酢酸ビニル (さくさんビニル)

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世界大百科事典(旧版)内の酢酸ビニルの言及

【エステル】より

(6)酢酸第二水銀を触媒としてアセチレンに酢酸を付加する。この方法は合成高分子の原料である酢酸ビニルの製造に用いられる。(7)ジカルボン酸モノエステル(酸性エステル)の合成は,いったん相当するジエステル(中性エステル)を合成した後,これを等モルの水酸化ナトリウム等で加水分解して合成する。…

【酢酸エステル】より

…アミルアルコールまたはフーゼル油から工業的につくられる製品は,n‐アミル-CH2CH2-CH2CH2CH3,イソアミル-CH2CH2CH(CH3)2,および活性アミル-CH2-CH(CH3)-CH2CH3の各異性体の混合物で,酢酸アミルamyl acetateと呼ばれ,溶剤,染色などに大量に用いられている。
[酢酸ビニルvinyl acetate]
 酢酸とビニルアルコールとのエステル。化学式CH3COOCH=CH2。…

※「酢酸ビニル」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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