酸化塩素(読み)サンカエンソ

化学辞典 第2版 「酸化塩素」の解説

酸化塩素
サンカエンソ
chlorine oxide

塩素の酸化物の総称.【】一酸化二塩素(dichlorine monoxide):Cl2O(86.91).酸化水銀(Ⅱ)と塩素との反応で得られる.室温では黄褐色気体.分子は折れ線形で,Cl-O1.7 Å.∠Cl-O-Cl110.89°.融点-120.6 ℃,沸点2.0 ℃.100~140 ℃ で熱分解する.水に易溶(HClOとなる).爆発性があるので,普通はCCl4溶液などとして用いられる.塩素化剤として利用される.[CAS 7791-21-1]【】二酸化一塩素(chlorine dioxide):ClO2(67.45).アルカリ金属の塩素酸塩と二酸化硫黄SO2を含む濃硫酸との反応で得られる.室温では黄~赤黄色の気体.分子は折れ線形で,Cl-O1.47 Å.∠O-Cl-O117.40°.融点-59 ℃,沸点11 ℃.衝撃,有機物などとの接触で爆発する.水に可溶.水溶液からClO2・8H2Oの黄色の結晶が得られる.光で分解するが,純粋なものは暗所では安定である.普通,水溶液として市販される.漂白剤(紙,パルプ,樹脂,繊維,小麦粉,ハチミツなど),酸化剤,消臭剤,防腐,防かび,殺虫剤殺菌剤,亜塩素酸塩の製造原料などに用いられる.[CAS 10049-04-4]【】四酸化二塩素(dichlorine tetraoxide):Cl2O4(134.90).ClO2は,-150 ℃ では弱い結合の二量体OCl(μ-O)2ClOをつくっている.これとは別に,

CsClO4 + ClSO2F → Cl (ClO4) + CsSO2F

の反応で,きわめて不安定なCl(ClO4)(塩素の過塩素酸塩と考えられる)が得られる.[CAS 27218-16-2]【】六酸化二塩素(dichlorine hexaoxide):Cl2O6(166.90).-10 ℃ で,二酸化塩素ClO2オゾン O3 を反応させると得られる.または O3 と Cl2 の光化学反応でも得られる.構造は[ClO2][ClO4]と考えられる.室温では赤褐色,油状の液体.気体ではClO3分子と平衡で存在する.融点3.5 ℃,沸点203 ℃.水と反応して,HClO3とHClO4になる.[CAS 12442-63-6]【】七酸化二塩素(dichlorine heptaoxide):Cl2O7(182.90).低温で五酸化リンP2O5と過塩素酸HClO4との反応で得られる.無色,油状の液体.分子構造は,気体・固体とも,2個の四面体型ClO4が各1個のOを共有した二量体型である.密度1.86 g cm-3.融点-91.5 ℃,沸点81 ℃.衝撃で爆発する.熱すると Cl2 と O2 とに分解する.水と反応してHClO4となる.[CAS 12015-53-1]【】そのほか,ClOはClO2の熱分解で生じるラジカル,ClO4Arで希釈したClO3(液体ではCl2O6)を熱分解して生じる短寿命のラジカル,Cl2O3は-78 ℃ でClO2を光分解して生じる不安定な固体で,O-Cl-ClO2と考えられている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酸化塩素」の意味・わかりやすい解説

酸化塩素
さんかえんそ
chlorine oxide

(1) 一酸化二塩素  Cl2O 。常温臭気ある黄褐色気体。融点-116℃,沸点2℃。 (2) 二酸化塩素  ClO2 。室温では黄ないし赤黄色の気体で,強い酸化性をもつ。塩素に似た不快臭がある。有機物と爆発的に反応し,また水銀,一酸化炭素に触れると爆発する。熱,太陽光によっても爆発を起す。沸点 11℃,融点-59℃。水,アルカリ,硫酸溶液に可溶。セルロース,ペーパーパルプ,小麦粉,皮革,油脂,繊維などの漂白や水の殺菌および脱臭処理,酸化剤などとして使用される。

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