金の瓜(読み)きんのうり

改訂新版 世界大百科事典 「金の瓜」の意味・わかりやすい解説

金の瓜 (きんのうり)

昔話。〈金の茄子(なす)〉〈黄金の成る木〉とも称される。放屁(ほうひ)した罪で殿様が妃をうつぼ舟で流す。妃は懐妊していたので,流離中に男の子を生む。子どもが成長してその真相を知り,放屁しない人が植えると金のウリが実るウリ種を売りに出かける。城に行くと,殿様が放屁しない人間はないと言う。子どもは妃の放逐を問い責める。殿様は,自分の子どもであることを悟り,母子を城に招き,子どもを跡継ぎにする。少年の英知機転そして知謀の小気味良さを主題にした物語である。この昔話は《遺老説伝》に沖縄の久高(くだか)島由来黄金の瓜子物語として収載されている。妃は,他の妃たちの讒言ざんげん)によって放屁をとがめられると語られる場合もある。王位継承者のうつぼ舟による流離譚〈流され王〉にも深くかかわる。中国,朝鮮にも同じような伝承があるが,笑話的な色彩が濃い。この昔話が,笑話的要素を特徴としながら,児童追放モティーフを内在するものと注目する説もある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金の瓜」の意味・わかりやすい解説

金の瓜
きんのうり

日本の昔話の一つ。放屁したために奥方の座を追われた母の過去を知った男の子が,13歳のとき,殿様の屋敷に黄金の瓜の種を売りに行き,「屁をひらぬ者がまかねばならぬ」と言い,「世の中に屁をひらぬ人間があるか」と殿様に言わせ,結局母は奥方の座に戻り,自分は跡取りになる。沖縄,奄美鬼界ヶ島壱岐佐渡など,主として島々に分布している。瓜のほか,なすや金のなる木などになっている話もあり,類話に「銭垂れ馬」その他がある。

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