出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
金銭や貴金属類,重要書類などを安全に保管するための室,あるいは箱。盗難や火災から守るため,各種の仕掛けが施されている。銀行の金庫室はその代表的なもので,きわめて大がかりな扉を開閉するようになっているが,近年は書類や磁気テープなどの情報源の保管の重要性が増し,金庫の構造も多様化している。単独の箱型の金庫にはJIS規格による耐火性能試験があり,防盗性能については,ガスバーナーによる溶断試験,ドリルによる穿孔試験,鋼球落下による衝撃試験などを業界で実施している。
貴重品を保管する方法は古くから考えられていたが,防犯・防災の機能が備わったといえるのは19世紀になってからである。それまでは硬質のオーク材の箱を鉄のベルトで補強したものなどが用いられていたが,1820年ころフランスで,鉄を二重ばりにし,その間に防熱材を詰めた金属製金庫が作られたという。30年代にはイギリスのC.チャブやブリキ職人のミルナーThomas Milnerが鉄ばりの金庫を製作した。40年にミルナーは,アルカリ溶液を入れたチューブで火災時には蒸気を出して炎上を防ぐ金庫も考案している。しかし67年にダイナマイトが発明されると,爆破に対しても備えなければならなくなり,ニッケル鋼やクロム鋼などを用いた分厚い壁を備えた金庫室が作られるようになった。1915年にはアメリカのルイジアナの銀行で,特殊鋼製の金庫室が酸素アセチレンで焼き切られる事件が発生し,コンクリートと鉄鋼を併用するなどの対策を迫られた。また,錠前破り対策としては,D.フィッツジェラルドによる数字や文字を組み合わせる符合錠(コンビネーション・ロック)の開発,J.サージェントによる一定時間作動するタイム・ロックの考案が画期的といえる。
日本では江戸時代,千石船に積まれていた船簞笥(ふなだんす)に盗難や難破に対するくふうがこらされていた。商家では千両箱が使われていたが,1866年(慶応2)の横浜大火の際,外国商館の鉄ばり金庫に保管されていたものが難を免れ,注目をあびるようになった。そこで69年(明治2)に,神奈川の竹内弥兵衛が洋風金庫を製造販売しだしたという。〈弗箱(ドルばこ)〉の名で知られたが,のちには泥棒除けにもなるところから〈泥箱〉とも呼ばれた。大正時代には鋳鉄製の金庫の量産が可能になり,1923年の関東大震災で金庫の役割が再認識されたが,第2次世界大戦中は金属統制のため製造中止となっていた。
執筆者:殖田 友子+荒俣 宏
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…なお,古代中国には通貨とされた子安貝を蓄える貯貝器(ちよばいき)があり,雲南省の石寨山古墓(せきさいさんこぼ)などから青銅製のものが出土している。現存する世界最古の金庫であり,貯金箱であろう。【高田 公理】【殖田 友子】。…
※「金庫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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