金遣い・銀遣い(読み)きんづかいぎんづかい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「金遣い・銀遣い」の意味・わかりやすい解説

金遣い・銀遣い
きんづかいぎんづかい

江戸時代の貨幣流通の地域的特徴を表したもので、江戸を中心とする東国では金貨を基本に取引し、京・大坂を中心とする西国では銀貨を基本に取引したことをいう。江戸時代の貨幣制度は三貨制度ともいわれるように、金、銀、銭(ぜに)が並行して流通していたが、幕府は金貨をもって統一しようと意図していた。しかし、経済的先進地である畿内(きない)では中世より銀による取引になじんでおり、18世紀後期以降、西日本でも金貨が流通貨幣として銀貨をしのぐようになったが、計算貨幣としては明治初年まで銀遣いが続いた。また、西南日本や東北地方の一部では銭遣いが前時代より根強く続いており、複雑な様相を示していた。

[岩橋 勝]

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山川 日本史小辞典 改訂新版 「金遣い・銀遣い」の解説

金遣い・銀遣い
きんづかい・ぎんづかい

江戸時代,商取引や貢納などに金または銀を用いたこと。室町末期以降開発された金銀山の地域的分布や取引慣行によって,関東は金遣い,関西は銀遣いという地域的差異が生じた。幕府は慶長金銀を発行し,金銀銭の公定相場を示して貨幣的統合をはかったが,金銀相場の変動は両地域の経済に大きな影響力をもち続けた。その後も金遣い・銀遣いの対立を克服しようとしたが,成功しなかった。1868年(明治元)の銀目廃止によって銀遣いの慣行は終わり,大坂の両替商は大きな打撃をうけた。江戸後期には銭匁勘定にみられるように,銀遣いに連関しながら実質的に銭を価値基準とする地域もあった。

出典 山川出版社「山川 日本史小辞典 改訂新版」山川 日本史小辞典 改訂新版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「金遣い・銀遣い」の意味・わかりやすい解説

金遣い・銀遣い
きんづかい・ぎんづかい

江戸時代の経済用語。金貨本位の取引を金遣い,銀貨本位の取引を銀遣いという。当時は金,銀,銭の3貨が流通していたが,金・銀貨の主たる流通範囲が異なっていた。物価から年貢納入までを,江戸を中心とする経済圏では金建てとし,大坂を中心とする経済圏では銀建てとしており,「江戸の金遣,大坂の銀遣」と呼ばれた。そのための両経済圏の商取引が盛んになると,金銀交換の標準比価が必要となり相場が立つようになった。しかし金銀比価の変動によって取引市場が混乱したため,幕府は法定比価を定めたが効果はなく,明治1 (1868) 年の明治政府の銀建て廃止までこの混乱状態が続いた。

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