鈴木光司(読み)スズキコウジ

デジタル大辞泉 「鈴木光司」の意味・読み・例文・類語

すずき‐こうじ〔‐クワウジ〕【鈴木光司】

[1957~ ]小説家静岡の生まれ。本名晃司こうじ。「楽園」で日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し作家デビュー。続く「リング」は映画化され大ヒットとなり、ホラーブームを起こす。他に「リング」の続編らせん」「ループ」、「仄暗い水の底から」「光射す海」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鈴木光司」の意味・わかりやすい解説

鈴木光司
すずきこうじ
(1957― )

小説家。本名晃司。静岡県浜松市生まれ。慶応義塾大学文学部仏文科卒業。最初に書いた小説らしきものは、小学生時代に宿題代わりに書き続けた冒険譚だった。将来は作家になると決めていた彼は大学を出た後も定職に就かず、アルバイトで食いつなぎながら子育てをし、シナリオセンターに通って小説修業を積む生活を続ける。その講座の朗読用に書いた処女長編『リング』が、1990年(平成2)の第10回横溝正史賞の最終候補に残る。ところがこの作品はミステリー範疇には入らないという理由で落選。続いて書き上げた『楽園』が第2回日本ファンタジーノベル大賞の優秀賞に選ばれ、ようやく作家デビューを飾る。この作品は生き別れになった妻を追い求める男の、1万年の時を隔てた恋物語だったが、太平洋島伝いに東進していく男の姿は、小学生の頃に書いた太平洋横断物語のバリエーションでもあった。

 翌91年『リング』も刊行されたが、発売当初はほとんど話題に上らなかった。ところが徐々に口コミで評判が広がり、やがて大ベストセラーとなるというきわめて珍しい例となった。1本のビデオテープを観た4人の男女が、同日同時刻に変死するという不可解な謎と、それを探っていく主人公の緊迫感に満ちた調査行と驚くべき結末は、まさしく新しいタイプのホラー誕生といえた。この作品の続編『らせん』(1996。吉川英治文学新人賞)と『ループ』(1998)が出版される頃には完全にブームを迎え、映画『リング』(1998)、『リング2』(1999)もまれに見る大ヒットとなった。

 ほかにホラー的傾向の作品は『仄暗(ほのぐら)い水の底から』(1997)があるが、鈴木光司の作風は本来ジャンル分けが困難な場合が多い。『光射す海』(1993)は海洋サスペンス風恋愛小説、『生と死の幻想』(1995)は純文学風な香りも高い。『エール』(2001)ともなると恋愛小説でありながら人生の応援歌的雰囲気も漂う。しかし、それらのいずれにも共通する基本的要素は父親を中心とした家族愛ということになろうか。

[関口苑生]

『『エール』(2001・徳間書店)』『『楽園』『光射す海』(新潮文庫)』『『リング』『らせん』『ループ』『仄暗い水の底から』(角川ホラー文庫)』『『生と死の幻想』(幻冬舎文庫)』

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知恵蔵mini 「鈴木光司」の解説

鈴木光司

小説家。1957年5月13日、静岡県生まれ。慶応義塾大学文学部仏文科卒。90年に『楽園』が日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞し、作家デビュー。『リング』(91年)、『らせん』(95年)、『ループ』(98年)、『バースディ』(99年)のホラーシリーズ4作品がベストセラーとなる。『リング』『らせん』は映画化されて大ヒットし、『リング』は後に米国でリメイク映画が製作された。著作は20カ国語に翻訳されており、2013年には、08年に刊行した長編サイエンス・ホラー『エッジ』が米国の文学賞「シャリー・ジャクスン賞」(長編部門)を受賞した。

(2013-7-17)

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