デジタル大辞泉
「鈴虫」の意味・読み・例文・類語
すず‐むし【鈴虫】
1 直翅目スズムシ科の昆虫。中形で、暗い草むらにすむ。体は黒色で、触角や脚の根元は白色。雌は長い産卵管をもち、地中に卵を産む。雄は左右の広い前翅をすりあわせてリーンリーンと鳴く。本州以南にみられ、古くから鳴く虫として飼われる。《季 秋》「飼ひ置きし―死で庵淋し/子規」
2 マツムシの古名。
「忍びやかに歌ふ声―にまがひたり」〈源・篝火〉
源氏物語第38巻の巻名。光源氏、50歳。出家した女三の宮の持仏供養、六条院での鈴虫の宴などを描く。
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すず‐むし【鈴虫】
[1] 〘名〙
※枕(10C終)四三「虫は すずむし。ひぐらし。てふ。松虫」
②
バッタ(直翅)目スズムシ科の昆虫。体長一・五~二センチメートル。体は
卵形で
扁平、全体に暗褐色または黒褐色で、触角や脚の一部などは白い。はねは
雌雄で異なり、雄の上
ばねは幅広いが雌では狭い。触角は糸状で、きわめて長い。低木のまじる草むらにすみ、雄はリーン、リーンと澄んだ美しい声で鳴く。秋に鳴く虫の一つとして珍重される。本州以南に分布。《季・秋》
※桂宮丙本忠岑集(10C前)「あるときには、
野辺のすずむしを聞ては、滝の水の音にあらかはれ」
※和漢三才図会(1712)五三「金鐘虫(ススムシ)」
③
主君の側近くにはべり仕える人。侍従。おもとびと。
※
嵯峨の通ひ(1269)「すずむしなる人を誘ひて〈略〉かの入道の山荘へ行きぬ」
④ (鈴口から
殿様を迎えるところから) 正妻のこと。妾を
轡虫(くつわむし)というのに対していう。
※雑俳・川柳評万句合‐天明四(1784)桜一「鈴むしをやめくつわむし御てうあひ」
[2] 「
源氏物語」第三八帖の巻名。源氏五〇歳の夏から秋八月まで。入道した女三の宮の持仏供養、六条院での鈴虫を聞きながらの人々の音楽、
冷泉院での
詩歌の会、
秋好中宮の出家の希望を源氏がいさめることなどが描かれる。
[
補注](1)②の挙例「桂宮丙本忠岑集」は「
古今要覧稿‐五四九」に「弘賢按に琴の声は
チンチロリンといふに似て水の音はリンリンとなくにかよふべければこのころの称呼は今
諸国となふる所とひとしかるべし」と説くのに従って、現在の鈴虫に同じと解した。
(2)「鈴虫」と「松虫」の名は、いずれも中古の作品から現われるが、現在のように「リーン、リーン」と鳴くのを「鈴虫」、「チンチロリン」と鳴くのを「松虫」というように、鳴き声によって区別することができる
文献は近世に入るまで見当たらない。そのうえ、近世の文献においても
両者は混同されており、一概にどちらとも決め難い。しかし現在では、中古の作品に現われるものについては、「鈴虫」を「松虫」と、「松虫」を「鈴虫」と解するようになっている。→「
まつむし(松虫)」の補注
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
鈴虫 (スズムシ)
学名:Homoeogryllus japonicus
動物。コオロギ科の昆虫
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報