(読み)かんな

精選版 日本国語大辞典 「鉋」の意味・読み・例文・類語

かんな【鉋】

〘名〙 (「かな(鉋)」の変化した語) 材木の面を削って平らに、また、なめらかにするための工具。やりがんな(さおがんな)は、槍の穂先の反(そ)ったような形、突きがんな(桶がんな)は、桶大工などの用いるもので刃が広く、両端に柄があり、押して用いる。現今、ふつうには、台がんなをいい、堅い木の台に、刃を傾けてはめこんである。かな。
※延喜式(927)四「採正殿心柱祭〈略〉小刀子一枚、鉇一枚」
※宗長日記(1530‐31)「いそのかみ古材木のはしばしと 手をのかんなに及ばぬは」
[語誌]「新撰字鏡」や「十巻本和名抄」「色葉字類抄」には「カナ」、「観智院本名義抄」には「カンナ」「カナ」両形がみえる。節用集類にも両形がみえるが「カンナ」の方が多い。「日葡辞書」では「Canna(カンナ)」を掲出するが、複合語には両形が用いられている。

かな【鉋】

〘名〙 材木を削ってたいらにする工具。室町以前は、槍の穂先のそったような形の「やりがんな」をさす。かんな。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
大鏡(12C前)二「工ども、うらいたどもをいとうるはしくかなかきて、まかりいでつつ」

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デジタル大辞泉 「鉋」の意味・読み・例文・類語

かんな【×鉋】

材木の表面を削ってなめらかにする大工道具用途によりひら丸鉋溝鉋などがある。古く用いられた、柄の先に刃を付けただけのやりに対して、台鉋ともいう。
[類語]紙やすりサンドペーパー

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鉋」の意味・わかりやすい解説


かんな

木工具の一種。木材を削るための道具である。平面曲面・角・溝など、あらゆる面を削るのに使用される。一般にカシの木の台に仕込まれた鉋を台鉋といい、普及したのは、16世紀ころとみられる。それまでのやりがんな(・鉇・槍鉋・鑓鉋)によるさざ波状の仕上げに比べて、台鉋ではより平滑な仕上げができるようになった。

 鉋の種類には大きく分けて、平面を削る鉋、際(きわ)を削る鉋、溝・脇(わき)を削る鉋、角を削る鉋、曲面を削る鉋がある。

 平面を削る鉋の平鉋(ひらかんな)は、板材や角材などの平面を平らに削るために使われるもっとも一般的な鉋であり、一枚鉋と二枚鉋に分類される。一枚鉋は削艶(けずりつや)を重視する場合に使用されることが多く、一般的には逆目(さかめ)を防ぐために裏金(うらがね)を入れた二枚鉋(合鉋(あわせかんな))が使われている。仕上げの工程に応じて、荒仕工鉋(あらしこ)、中仕工鉋(ちゅうしこ)、仕上鉋(しあげ)の3段階に分けられていたが、それがさらに分化して、「鬼荒仕工」「荒仕工」「ひらとり」「中仕工」「上仕工」「仕上げ」という6種類になり、木の表面を美しく仕上げるために、荒削りから仕上げ削りの工程に応じて多種の鉋を使い分ける。

 際を削る鉋の際鉋(きわかんな)は、平鉋の刃を一方に傾斜させて斜めに切り口を設け、鉋台の下端と一方の角に刃が出るようにつくられており、入隅(いりずみ)(板や壁などが交わった内側の角)の際を削る場合や、際の仕上げなどに使われる。使用する方向によって、右勝手と左勝手がある。

 溝・脇を削る鉋には、決(しゃく)り鉋、脇取鉋、底取鉋などがある。決り鉋と底取鉋は、鉋台の下端の幅と刃先の幅が同じで、鴨居(かもい)・敷居など、一定幅の長い溝の底を削るのに使用される。脇取鉋は、溝の側面を削るのに使用され、刳(くり)小刀のような刃先が台の側面に出るように仕込んである。

 角を削る鉋は、板材や角材の各部分の削り落とし(面取り)、曲面や飾り模様の削り出しに用いられる特殊な鉋である(面取鉋(めんとりかんな))。鉋台の下端を面の形状に合わせて加工し、これに合うように刃を研ぎ合わせて仕込む。台の揺れを防ぐために定規がついているものもある。面には、几帳(きちょう)面・平几帳面・坊主(ぼうず)面・銀杏(ぎんなん)面・瓢箪(ひょうたん)面・自由角面・自由猿頬(さるぼお)面などの種類がある。

 曲面を削る鉋には、下端が凹型に湾曲した内丸鉋と、凸型になった外丸鉋がある。内丸鉋は、凸型の曲面外側を削り、外丸鉋は凹型の曲面の内側を削る。

 そのほかには、幅の広い板の反り防止を目的とした蟻桟(ありざん)の加工などに使用される蟻決(ありしゃく)り鉋や、おもに鉋台を調整する目的で刃を台に対してほぼ直角に仕込んだ台直し鉋がある。

[赤尾建蔵 2021年7月16日]


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改訂新版 世界大百科事典 「鉋」の意味・わかりやすい解説

鉋 (かんな)

堅木(かたぎ)(カシなど)の長方形の台にV形の穴と溝を作り,この溝にはめた刃物で材面を平滑に削る木工用の道具。刃物を台中に包んだ形から鉋の字があてられるが,平滑に削るという意味で欧米ではプレーンといい,古代中国では準(じゆん)ともいった。現在の台鉋が日本にあらわれたのは16世紀後半といわれるが,それ以前は長い柄の先に笹葉状の穂先をつけたやりがんな(鉇)が,加奈(かな)または加牟奈(かんな)の名で仕上削りに広く用いられていた。さらにろくろびき用の刃物をも〈かんな〉といい,〈かんな〉と呼ぶ工具の種類は多い。日本では一般に鉋は手前に引いて削るが,西欧や中国では押して削る。また日本の鉋は台に対し,刃を溝はめで固定するが,西欧や中国では楔締めかねじ締めである。大型の鉋を逆さにして刃を上面にし,材を手で持って押して削るものを正直(しようじき)というが,主として桶屋が板の矧手(はぎて)削りに用いる。この正直は古代中国では臥準(がじゆん)といい,やはり桶職人が使い,日本でも16世紀ころには用いていた。

 鉋刃はもともと1枚であったが,明治初期に,逆目防止用に裏刃を付した二枚鉋が創案され,以後二枚鉋が普通になった。刃の台に対する角度を仕込勾配という。8分勾配が普通で,堅木にはより大きくする。種類は被削面の形状や寸法に応じて各様である。
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百科事典マイペディア 「鉋」の意味・わかりやすい解説

鉋【かんな】

木材の表面を削り仕上げる木工具。刃先角は普通25°で,台木にはカシを使用。用途によって,平面を削る平鉋,板をしゃくるように削るそり鉋,板のきわを削るきわ鉋,敷居の溝などのわきを削るわき取鉋,溝を削る溝取鉋,丸溝を削る南京鉋,丸い表面を削る丸鉋(凸面用を内丸鉋,凹面用を外丸鉋),鉋台などかたい木材を削る台直(だいなおし)鉋などがある。
→関連項目木工具やりがんな(【やりがんな】)

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家とインテリアの用語がわかる辞典 「鉋」の解説

かんな【鉋】

木材の表面を平滑に削るための道具。直方体の台木の中に、角度をつけて刃をはめ込んだもの。平面を削る平がんな、敷居などの溝を削る溝がんな、曲面を削る丸がんなや反り台がんななど、使用目的により形が異なり、種類も多い。◇各種のかんなの名称は「~かんな」と連濁音にならない形もある。

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防府市歴史用語集 「鉋」の解説

 材木の面をけずって平らにする道具です。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【木工芸】より

…木材加工に使用した工具には鋸(のこぎり),鑿(のみ),ハンマー,斧,錐(きり),小刀,砥石(といし)などがあり,また部材の組手には枘接(ほぞつぎ)と蟻接(ありつぎ)などが使われていたことからみて,古代エジプトの木工技術はきわめて高い水準に達していたものとみられる。木材を平らに削る鉋(かんな)の出現は17世紀を待たねばならない。木工にとって重要なろくろ技術はメソポタミア地方の古代国家の家具に多くみられるため,この技術の発生地はメソポタミア地方とされている。…

※「鉋」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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