鉛直線偏差(読み)エンチョクセンヘンサ(英語表記)deflection of the vertical
deflection of the plumb line

デジタル大辞泉 「鉛直線偏差」の意味・読み・例文・類語

えんちょくせん‐へんさ【鉛直線偏差】

地球上のある地点実際鉛直線と、その点を通る仮想地球楕円体に立てた法線とのなす角。ジオイドの形や地下構造を知る手がかりとなる。

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改訂新版 世界大百科事典 「鉛直線偏差」の意味・わかりやすい解説

鉛直線偏差 (えんちょくせんへんさ)
deflection of the vertical
deflection of the plumb line

おもりを下げて静止させた糸の方向を鉛直線といい,それがその地点の上下方向を決める。一方,地図を作るときは,地球の形として適当な地球楕円体を決め,各地点をその上に投影するのが通常である。この場合には,その楕円体の表面に立てた法線をその地点の上下方向としている。こうして決めた2種類の上下方向は一致しないのがふつうで,その差を鉛直線偏差という。鉛直線は重力の向きであって,物理的に決まり,地球内部の物質の密度分布の影響を受ける。それに対して楕円体の法線は,単に幾何学的に決まるものであるから,両者に差の生じるのは当然である。鉛直線偏差は通常南北成分ξ,東西成分ηと分けて表す。二つの方向を上に延長したとき,鉛直線に対して法線の向きが南にずれた角度がξ,西にずれた角度がηである。ある地点に対し,地図上の経緯度をλg,ψgとし,天文観測で決まる経緯度をλa,ψaとすると,ξ=ψa-ψg,η=(λa-λg)cosψgと書くことができる。ただし経度λは東経を正としている。日本で採用している地図では,平均してξ=11″,η=-11″ぐらいといわれている。鉛直線偏差の量は場所により,また楕円体のとり方により異なってくる。重力理論によって決定される特定の楕円体を地球の形として採用した場合に得られる鉛直線偏差を,特に重力鉛直線偏差という。
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世界大百科事典(旧版)内の鉛直線偏差の言及

【緯度】より

…原点では天文緯度と測地緯度が等しいとして測量が始まるが,原点から離れた地点では,地下構造の影響や採用楕円体が適切でないなどのため,天文緯度と測地緯度はわずかであるが違う。この差を鉛直線偏差という。回転楕円体の中心と楕円体上の1点を結ぶ直線と赤道面の作る角度を地心緯度という。…

※「鉛直線偏差」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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