銀の匙 Silver spoon(読み)ぎんのさじ しるばーすぷーん

知恵蔵 の解説

銀の匙 Silver spoon

週刊少年サンデー」(小学館)に2011年から連載されている荒川弘のマンガ作品。北海道の農業高校を舞台に繰り広げられる青春物語。単行本は12年7月に第4巻が発売され、累計400万部を突破した。第4巻は、小学館史上最速で初版100万部を達成。12年に「マンガ大賞2012」を受賞した。
主人公の八軒(はちけん)勇吾は、「エゾノー」こと大蝦夷農業高校の酪農科学科1年生。サラリーマン家庭に育ち、進学校として知られる中学で挫折して、家を離れたくて寮のある同校に入学した。農家の後継ぎの多いエゾノーで、明確な目標を持つクラスメートらに囲まれて劣等感を覚えながらも、農業実習や寮生活、馬術部の活動、牧場でのアルバイト体験などを通じて多くの人と関わり、成長していく。自給自足が可能なほど豊富な農畜産物を生産しているエゾノーの学校生活は、石窯(いしがま)でピザを焼いておいしさに感動したり、名前を付けて育てた豚を肉にすることに悩んだり。都会の高校とは違う、農業高校ならではの青春がまぶしい。勇吾が、家畜農業機械を愛する友人らに刺激を受ける一方で、彼らもまた、農業と縁のなかった勇吾が向ける農業へのまなざしに影響されていく。そして、食の向こうにある農を忘れがちな読者も、勇吾の目を通して、命をいただいて生かされていることに気付かされる。
作者は、累計5700万部以上が発行されてアニメにもなった人気マンガ『鋼の錬金術師』(スクウェア・エニックス、全27巻)で知られている。北海道の農家出身で、実体験に基づく農業エッセイマンガ『百姓貴族』(新書館)もある。

(原田英美  ライター / 2012年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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