鋳掛(読み)イカケ

デジタル大辞泉 「鋳掛」の意味・読み・例文・類語

い‐かけ【鋳掛(け)】

鍋・釜など金物の壊れた部分を、はんだなどで修理すること。
江戸時代大坂夫婦連れで歩いた鋳掛け屋があって、3世中村歌右衛門がこれを所作事にして演じたところから》夫婦が連れ立って歩くこと。

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精選版 日本国語大辞典 「鋳掛」の意味・読み・例文・類語

い‐かけ【鋳掛】

〘名〙
① なべ、かまなどの金物のこわれた部分を、はんだや銅などで修理すること。また、それを業とする人。鋳掛師。鋳掛屋
※雑俳・軽口頓作(1709)「とれました・鍋のいかけがつばけで矢」
② 夫婦つれだって歩くこと。また、その者。文化(一八〇四‐一八)末年、大坂に夫婦づれの土瓶鋳掛屋があり、三世中村歌右衛門がこれをモデルに所作事を演じたため評判になり、文政年間(一八一八‐三〇)、京坂の流行語となって、一般に行なわれた。夫婦づれ。アベック。どびんのいかけ。いかけや。〔浪花聞書(1819頃)〕

い‐か・ける【鋳掛】

〘他カ下一〙 いか・く 〘他カ下二〙 金属製の器の破損した部分に、溶かした銅、はんだなどを流しかけて修理する。
太平記(14C後)三九「本堂の庭に十囲(ゐ)の花木四本あり。此の下に一丈余りの鍮石(ちゅうじゃく)花瓶を鋳掛(イかけ)て」

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鋳掛」の意味・わかりやすい解説

鋳掛
いかけ

破損した銅器や鉄器を、その割れ目に溶融はんだや銅を流し込み凝固させて修理すること。近世の江戸や大坂には、所要道具を天秤棒(てんびんぼう)で担ぎ、「いかけ、いかけ」と呼び歩き、家々から注文があるとその場にふいごを据えて即座にこの方法で鍋(なべ)、釜(かま)を修理する鋳掛屋がいた。現在では、鋳物製品の巣(空洞)などの不良箇所を補修する一方法として、不良部分に溶湯を静かに適量に流し、不良部分の表面を溶かしつつ溶湯を補給して正しい形に修理する方法が鋳掛tinkering, burning onとよばれる。鋳物製品の不良部の補修はアーク溶接やガス溶接によることが多く、鋳掛は特別の場合でないと行わない。

[井川克也・原善四郎]


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