にしき‐ぎ【錦木】
[1] 〘名〙
①
ニシキギ科の落葉低木。各地の
山野に生える。高さ二メートル内外。枝にコルク質の縦翼が発達する。葉は対生し
楕円形または
倒卵形で縁に細鋸歯
(きょし)があり
葉柄を含めて長さ四~六センチメートル。秋、紅葉する。初夏、葉腋に葉よりも短い柄についた数個の淡
黄緑色の小さな四弁花が咲く。果実は楕円形で
暗赤色、熟すと裂けて黄赤色の仮
種子に包まれた
球形の種子を出す。材は細工用。
樹皮から紙をつくる。漢名、
衛矛・
鬼箭。やはずにしきぎ。しらみころし。《季・秋》 〔多識編(1631)〕
② 昔、
奥州で、男が恋する女に会おうとする時、その女の家の門に立てた
五色にいろどった一尺(約三〇センチメートル)ばかりの木。女に応ずる意志があれば、それを取り入れて
気持を示し、応じなければ男はさらに繰り返して、千本を
限度として通ったという。また、その
風習。
※後
拾遺(1086)恋一・六五一「錦木はたてながらこそ朽ちにけれけふのほそ布胸あはじとや〈能因〉」
③ 歌舞伎の
隈取(くまどり)の一種。現在は用いない。〔劇場新話(1804‐09頃)〕
※
洒落本・竊潜妻(1807)下「むかひ酒ならあっさりと
湯豆腐に錦木
(ニシキキ)といふ所を、鴨の
鋤焼とは恐入ました」
[2]
謡曲。四番目物。各流。世阿彌作。旅僧が
陸奥の狭布
(きょう)の里で、細布を持った女と錦木を持った男に会う。二人は細布と錦木のいわれを語り、三年間女の家の門に錦木を立てて求婚し続けたというその男の塚に案内して消える。その夜の夢の中に前の男女が現われて
懺悔物語をし、仏縁を得た喜びの舞を舞う。
[語誌]平安後期から
中世にかけて、(一)②の意味で、好んで
和歌に詠まれた。文を付けて贈る習慣があり、「錦木にかきそへてこそ言の葉も思ひ染めつる色は見ゆらめ〈
顕昭〉」〔
六百番歌合‐恋一・五番〕のような歌も残っている。
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デジタル大辞泉
「錦木」の意味・読み・例文・類語
にしき‐ぎ【錦木】
1 ニシキギ科の落葉低木。山野に自生。枝にコルク質の翼が四方につき、葉は楕円形で、秋に紅葉する。5月ごろ、黄緑色の小花が咲き、実は赤く熟す。庭木にされ、枝に翼のないものをコマユミという。ニシキギ科にはマユミ・マサキなども含まれ、種子に鮮やかな色の仮種皮をもつものが多い。《季 秋 花=夏》「われ稀に来て―を立去らず/夜半」
2 5色に彩った約30センチくらいの木。昔、奥州で、男が恋する女に会おうとするとき、女の家の前にこれを立て、女に迎え入れる心があれば取り入れ、取り入れなければ、男はさらに繰り返し、千本を限度として通ったという。
「思ひかね今日立て初むる―の千束も待たであふよしもがな」〈詞花・恋上〉
[補説]書名別項。→錦木
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錦木 にしきぎ
?-? 江戸時代の女性。
江戸吉原玉屋の遊女。情人の鐘(つりがね)弥左衛門が小喜田権兵衛と喧嘩(けんか)したとき,両者が抜き合わせた刀に裲襠(うちかけ)をかけて仲裁し,とっさの機転と度胸のよさで有名になった。
出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例
錦木 (ニシキギ)
学名:Euonymus alatus
植物。ニシキギ科の落葉低木,園芸植物,薬用植物
出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報