鎌田俊清(読み)かまたとしきよ

改訂新版 世界大百科事典 「鎌田俊清」の意味・わかりやすい解説

鎌田俊清 (かまたとしきよ)
生没年:1678-1747(延宝6-延享4)

江戸中期の数学者。大坂宅間源左衛門(能清)という数学者がいた。この宅間が宅間流開祖である。鎌田は宅間の孫弟子である。くわしい伝記は不明。1722年(享保7)に著した《宅間流円理》は,arcsin xのマクローリン展開公式に相当する公式が示されている。また,本書にはsin xの展開公式に相当する公式も示されている。彼は,円に内接および外接する正244角形の周の長さを計算して,

 3.14159265358979323846264341667>π>3.141592653589793238462643366538

であることを示した。正6×225角形についても同様の計算を示している。さらに,鎌田の著書と見られる《円理秘術》には,arcsin のマクローリン級数に相当する公式も示されている。関孝和の弟子建部賢弘が(arcsin x2の無限級数を示したのが1722年であるから,くしくも,日本の東西で,同じ年に無限級数展開がくふうされたことになる。
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朝日日本歴史人物事典 「鎌田俊清」の解説

鎌田俊清

没年:延享4(1747)
生年:延宝6(1678)
江戸中期の和算家。大坂の人。くわしい経歴は不明。関流とは独立に大坂で発展した宅間流の3代目の俊才(初代は大坂の人宅間能清)。建部賢弘の『綴術算経』と同じ享保7(1722)年に『宅間流円理』を著す。この中で鎌田は無限級数を駆使してsinx,arcsinxの展開を定式化したり,円に内接,外接する正244角形の周を計算して円周率を小数点以下25桁ほど求めている。日本の東西でくしくも類似の発見がなされたのは「科学の同時発見」の例としても興味深い。<参考文献>日本学士院編『明治前日本数学史』3巻

(佐藤賢一)

出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報

デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「鎌田俊清」の解説

鎌田俊清 かまた-としきよ

1678-1747 江戸時代中期の和算家。
延宝6年生まれ。宅間能清(よしきよ)の孫弟子で宅間流の3代目。享保(きょうほう)7年(1722)にあらわした「宅間流円理」で,arc sin χのマクローリン展開公式に相当する式をしめす。また円周率のくわしい数値もしめした。延享4年7月死去。70歳。大坂出身。通称は五郎兵衛。

出典 講談社デジタル版 日本人名大辞典+Plusについて 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の鎌田俊清の言及

【関流】より

…関流は建部賢弘,中根元圭,久留島義太ほか多数のりっぱな数学者が輩出したので他の流派を圧倒した。関西では宅間能清を始祖とする宅間流があり,鎌田俊清というりっぱな数学者が出た。大島喜侍の弟子三池市兵衛を始祖とする三池流は金沢を中心として広がった。…

【和算】より

…松永の主著《方円算経(ほうえんさんけい)》(1739稿)には,三角関数,逆三角関数のべき級数展開などが示されている。一方,関西では鎌田俊清(1678‐1747)が《宅間流円理(たくまりゆうえんり)》(1722序)をまとめ,arcsinxやsinxのべき級数展開を示している。
[有馬頼徸]
 松永良弼の弟子山路主住(1704‐72)は,中根元圭,松永良弼,久留島義太の業績を受け継いで,これを弟子に伝えた。…

※「鎌田俊清」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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