(読み)チン

デジタル大辞泉 「鎮」の意味・読み・例文・類語

ちん【鎮〔鎭〕】[漢字項目]

常用漢字] [音]チン(呉)(漢) [訓]しずめる しずまる
押さえて安定させる。しずめる。しずまる。「鎮圧鎮火鎮護鎮魂鎮座鎮静鎮痛
おもし。押さえ。「重鎮風鎮文鎮
中国で、地方の都市。「郷鎮・武漢三鎮
[名のり]おさむ・しげ・しず・しん・たね・つね・なか・まさ・まもる・やす・やすし

ちん【鎮】

重いものでおさえること。また、そのもの。おもし。
奈良・平安初期、寺務を統轄した僧職。三綱さんごうの上位で、大・中・少の別があった。
中国で、
北魏以降、軍団を駐屯させた軍事・経済上の要地の称。また、その軍団の称。
代以降、に属する地方の小都市の称。「武漢三

しず〔しづ〕【鎮】

おもり。おもし。
「結びめ後に綷目くけめのすみに鉛の―を入れ」〈浮・一代男・四〉

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精選版 日本国語大辞典 「鎮」の意味・読み・例文・類語

ちん【鎮】

〘名〙
① おさえしずめること。やすんじること。また、そのもの。まもり。鎮護。鎮撫
※続日本紀‐養老六年(722)閏四月乙丑「鎮無儲粮、何堪固守、募民出穀」 〔詩経箋‐大雅・韓奕〕
② 重いものでおさえること。おさえ。おもし。
※続春夏秋冬(1906‐07)〈河東碧梧桐選〉夏「蚊帳の鎮四つ紅ぞ見ゆるなり〈得川〉」 〔楚辞‐九歌・湘夫人
④ 奈良・平安時代初期、諸寺におかれて寺務を総理する僧職。三綱の上位に位し、大・中・少鎮があり、別当と共通する性質をもつ。尼寺に多く見られる。
※続日本紀‐天平勝宝八年(756)五月丁丑「又和上鑒真・小僧都良弁、華厳講師慈訓、大唐僧法進、法華寺鎮慶俊、或学業優富、或戒律清浄、堪聖代之鎮護、為玄徒之領袖
⑤ 新築した建物の梁(はり)、天井などの上に鎮護を祈って置くお守り札。
※春記‐長久元年(1040)一二月一〇日「右衛門督殿初渡給寝殿日也〈略〉戌剋置鎮於梁上并組入上
⑥ 中国、北魏以降、軍隊を駐屯させて守備や治安にあたる地、またはその軍団に付した名称。〔晉書‐宗室伝・司馬休之〕
⑦ 中国、唐末五代、節度使部下武人を遣わし民政軍政をつかさどらせた経済上の要地で、宋以降は県に属する小都市。転じて、商業の盛んな大きな町。→草市。〔事物紀原‐州郡方城部・鎮〕

しずめ しづめ【鎮】

〘名〙 (動詞「しずめる(鎮)」の連用形名詞化)
① しずめること。鎮圧すること。
② 人を制し治める偉大な力をもっていること。おもし。おさえ。鎮護。
書紀(720)神功摂政前九月(北野本南北朝期訓)「和魂(にきみたま)を請(ね)きて王船(みふね)の鎮(シツメ)と為(す)
③ 物が動いたり舞い上ったりしないように押えること。また、そのためのおもし。
※玉塵抄(1563)一九帷帳のすそに犀を作てつけてをくぞ〈略〉しづめにをしにする心ぞ」

しず しづ【鎮】

〘名〙
① おもり。おもし。鎮子(ちんし)
浮世草子・好色一代男(1682)四「帯はむらさきのつれ左巻、結びめ後に綷目(くけめ)のすみに鉛のしづを入」
恩愛の情が重いこと。きずな。しがらみ。
※歌舞伎・花雲佐倉曙(1852)宗五郎住家の場「お尋者の宗五郎〈略〉妻子のしづに引かされて、戻り居ったに違ひ無い」
③ 上方で、役者に花輪、引幕、幟などを贈るときに添える祝儀。

ちん‐・ずる【鎮】

〘他サ変〙 ちん・ず 〘他サ変〙 騒ぎや悪霊などをしずめて平穏にさせる。おさめる。しずめる。
※続日本紀‐神亀元年(724)五月壬午「従五位上小野朝臣牛養為鎮狄将軍、令出羽蝦狄

しずもり しづもり【鎮】

〘名〙 (動詞「しずもる(鎮)」の連用形の名詞化) しずまっていること。しずけさ。
※露芝(1921)〈久保田万太郎〉四「風のやんだあとのしづもりに」

ちん‐・ず【鎮】

〘他サ変〙 ⇒ちんずる(鎮)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

旺文社世界史事典 三訂版 「鎮」の解説


ちん

宋代以後,県に所属する小都市に与えられた名称
もともと鎮は,北魏 (ほくぎ) のときから州県に駐屯 (ちゆうとん) する軍団に付けられた名称であった。唐末期・五代には,節度使が管内の要地に自己の腹心を鎮将として駐屯させ,警察・裁判・徴税などを行わせたが,その駐屯地または支配圏が鎮と呼ばれた。しかし宋になると,鎮将の権力が奪われ,県の下で郷とともに地方の一行政区画となり,郷が農村をさすのに対し,小商工業都市を意味するようになった。

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世界大百科事典(旧版)内のの言及

【市】より

… 商業区域としての市の制度は,唐の中ごろ以後しだいにゆるんで他の坊にも進出し,北宋になると坊制の廃止に乗じて商店は街頭にも現れ,南宋になると都市内のいたる所に見られるようになり,夜間営業の禁もおのずからすたれた(開封)。一方,南北朝時代から唐・宋時代にかけて,地方の小集落や州県城の郊外の交通の便利な場所に〈草市〉とよばれる商業地域が現れ,ときには〈鎮〉とよぶ行政単位に昇格することもあった。〈草市〉も元来は定期市であったらしいが,宋以後の市制度の崩壊後,〈定期市〉が地方都市や郷村のみならず国都でも見られるようになった。…

【市鎮】より

…中国の宋代以後,農村の市場中心地の称。鎮市ともいう。中国社会は早くから自給性を失っていたものの,地方農村部に集落が目立つようになるのは六朝以後であり,政府が県城に公認の市(いち)を設け統制することで重要な流通は支障をきたさなかったようである。…

【商業】より

… 以上のような常設の市のほかに定期市があり,市制崩壊とともに重要性を増してきた。定期市は都市のものと郷村(市鎮)のものとに大別される。都市の定期市には年市,旬市,日市の区別があり,宋都開封の相国寺の市は有名である。…

【都市】より

…こうした城郭都市の変化は,当然それを取り巻く周囲と連動している。 江南では南北朝時代から交通の要衝に草市と呼ばれる商業集落が発生していたが,唐中期から五代には,節度使はこうした場所に軍事拠点,商税徴収所を設けて鎮(ちん)と呼んだ。宋に入ると,それが国家の統轄下に置かれ,県以下の小都市として固定する。…

※「鎮」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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