鏡の間(読み)かがみのま

精選版 日本国語大辞典 「鏡の間」の意味・読み・例文・類語

かがみ【鏡】 の 間(ま)

能楽舞台で、楽屋から橋懸りに出る揚幕(あげまく)の内にある部屋。常に姿見鏡を掛けてあるのでいう。役者は登場直前にここで装束を映したり、面(おもて)をつける。幕際。→能舞台
※雑俳・柳多留‐八四(1825)「天下一四座相つめる鏡の間」
江戸時代劇場で、大臣柱(だいじんばしら)と大臣柱の間、すなわち本舞台に相当する所。〔戯場訓蒙図彙(1803)〕
四方に鏡を張りめぐらしてある部屋。ベルサイユ宮殿のものは名高い。

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デジタル大辞泉 「鏡の間」の意味・読み・例文・類語

かがみ‐の‐ま【鏡の間】

能舞台で、橋懸かりの奥の揚げ幕のすぐ内にある板敷きの部屋。姿見鏡を置き、役者は登場直前にここでおもてをつけ、気を統一する。
江戸時代、歌舞伎舞台で大臣柱と大臣柱の間の本舞台になるところ。
四方に鏡を張りめぐらしてある部屋。
鏡の回廊

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改訂新版 世界大百科事典 「鏡の間」の意味・わかりやすい解説

鏡の間 (かがみのま)

能舞台の一部橋掛りの突き当り,揚幕の奥,楽屋とのあいだに位置する板敷きの部屋。大きな姿見の鏡が備えつけてあり,諸役は楽屋で装束を付け終えると鏡の間の鏡に向かい,姿をととのえ,心をしずめて登場を待つ。とくにシテは鏡の前で床几にかけ,ここで面(おもて)をつける。お調べと称し,囃子方が出演前に一定の奏法で音色の調子を合わせるのも鏡の間で行う。また,《上演の前には,鏡の間に祭壇を設け,いわゆる翁飾りをしつらえ,全役が集まり,お調べのあと杯事(さかずきごと)を行う。なお鏡の間の幕口に近い壁には見所を見通せる櫺子れんじ)窓があり,これを物見窓といい,奉行窓,あらし窓とも呼ぶ。
能舞台
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百科事典マイペディア 「鏡の間」の意味・わかりやすい解説

鏡の間【かがみのま】

能舞台の一部。楽屋と舞台(橋掛り)の中間にある板張りの部屋で,両方の機能を果たす。姿見の大鏡がある。ここで扮装(ふんそう)の最後に能面をかけたシテは,精神を統一し,揚幕をあげさせて橋掛りへ出る。また,囃子方は舞台に出る前にここで〈お調べ〉と称する短い曲を演奏する。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鏡の間」の意味・わかりやすい解説

鏡の間
かがみのま

能舞台に向って左側,橋懸りの突当りの揚幕 (あげまく) の奥の板敷の特殊な部屋。大きな姿見が備えてあり,舞台と楽屋の間に位置する。装束の着付を終えた役者や囃子方がここで出を待つ。

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世界大百科事典(旧版)内の鏡の間の言及

【能舞台】より

…地謡座の奥にある貴人口(きにんぐち)と正面の白洲梯子(しらすばしご)は現在の演能では使用しない。揚幕の奥は鏡の間と呼ぶ板の間で,大きな鏡が据えてある。楽屋で扮装を終わった演者は,この鏡の前で能面をつけ,姿を整えて出を待つ。…

※「鏡の間」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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