長滝寺(読み)ちようりゆうじ

日本歴史地名大系 「長滝寺」の解説

長滝寺
ちようりゆうじ

[現在地名]白鳥町長滝

長良川の右岸白山長滝はくさんながたき神社(白山神社)境内にあり、明治維新後の神仏分離まで白山中宮はくさんちゆうぐう長滝寺と称し、両者一体であった。「ながたき」ともよび、夕日ゆうひ寺とも称された。天台宗。本尊大日如来。草創は泰澄が養老元年(七一七)白山登頂のとき長滝を通り、この地が神明遊止の適地であるとの神託を受け、当寺を建立したことに始まるという。また伝えに、養老六年に元正天皇の病にあたり祈祷したところ天皇は平癒し、翌七年一刀三礼の勅作の十一面観音・聖観音阿弥陀如来の三尊が本地仏として奉納された。これにより本地の二字を加え、加賀の白山本宮に対し白山本地中宮長滝寺と称するようになった。以来白山信仰の霊場として人々の尊崇を集め、天下泰平五穀豊穣・悪疫鎮静に威力を発揮したという。創建を泰澄と結びつけることについては疑問が残るが、「白山之記」によれば天長九年(八三二)には白山三馬場が設定されており、美濃馬場である当寺は美濃における白山信仰の拠点となった。

はじめ法相宗であったが、天長五年に天台宗に改宗、治安元年(一〇二一)後一条天皇の綸旨により天台別院になったという。同三年山津波によって六〇坊が埋没する被害を受けるが、当時神殿仏閣三〇余宇・六谷六院・僧坊三六〇を擁していたと伝えている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

百科事典マイペディア 「長滝寺」の意味・わかりやすい解説

長滝寺【ちょうりゅうじ】

岐阜県郡上市にある天台宗の寺。本尊大日如来。717年泰澄(たいちょう)が白山(はくさん)登頂の時,当地を通り草創と伝える。〈ながたきでら〉とも。白山長滝(はくさんながたき)神社境内にあり,明治までは両者は一体で,白山中宮長滝寺と称した。白山信仰の霊場として崇敬され多くの堂塔伽藍を誇ったが,室町末からは真宗教団の教線の拡張により振るわなかった。

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世界大百科事典(旧版)内の長滝寺の言及

【白鳥[町]】より

…北西部の両白山地は日本海側への分水界をなし,九頭竜川最上流部の支流石徹白(いとしろ)川が源を発して福井県側へ流下する。町内には白山開祖泰澄の創設と伝える長滝(ちようりゆう)寺(白山中宮)があり,白山信仰の東海方面の拠点美濃馬場として栄えた。国道156号線(白川街道)と157号線(越前街道)の分岐点で,長良川鉄道線も通る。…

【白山】より

…加賀馬場の中心は白山本宮で,神仏習合により平安中期以後は白山寺が実権を握る。越前馬場は白山中宮で平泉寺が中心であり,美濃馬場は白山本地中宮といい,中心は長滝(ちようりゆう)寺である。718年(養老2)泰澄(たいちよう)がはじめて登拝して,御前峰の神は白山妙理大菩薩と号し,本地が十一面観音,大汝峰の神は大己貴(おおなむち)で本地は阿弥陀如来,別山は小白山別山大行事で聖観音が本地ということを明らかにしたとする伝承がある。…

※「長滝寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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