防火加工(読み)ぼうかかこう(英語表記)fire proofing

改訂新版 世界大百科事典 「防火加工」の意味・わかりやすい解説

防火加工 (ぼうかかこう)
fire proofing

易燃性,可燃性の繊維を燃えにくくするための加工をいい,難燃加工,防炎加工ともいう。化学繊維の場合は,難燃剤を混合紡糸することにより難燃化することが多い。一般に,塩素,臭素,リン,ホウ素などは難燃性の元素として知られ,これらを含む物質は,大なり小なり難燃化に寄与する。セルロース系繊維の防火加工は最も広く研究されており,リン酸塩やホウ酸などを含浸しただけで難燃性が得られるが,洗濯により効果が失われる。セルロースと反応して結合する永久難燃加工剤としては,N-メチロールジメチルホスホノプロピオンアミド(ピロバテックスCP)や,テトラキス(ヒドロキシメチル)ホスホニウム塩(THPCおよびTHPOH)が代表的である。セルロースはリンの存在下では比較的低温で脱水,炭化するため難燃化する。羊毛は,チタンやジルコニウム塩との処理により容易に難燃化される。難燃性の要求される分野はインテリア用品,寝具,子ども・老人・病人用寝巻,車両・船舶・飛行機内装品,消防用,工事・作業用,軍事用などであり,世界的に法規制が強化される傾向にある。とくに1972年のアメリカの子ども用寝巻に関する規制が有名である。難燃繊維としては,アクリル系(モダクリル),芳香族ナイロン,ノボロイド,ポリベンズイミダゾール繊維などがあるが,防火加工のものに比べ,価格,染色性などの点で,一般被服用としては問題点が残されている。防火加工については,火災時における煙と有毒ガスの発生など,多くの問題が残されている。加工剤の安全性も問題であり,難燃効果の高い,トリス(アジリジニルホスフィンオキシド)(略称APO)や,トリス(2,3-ジブロモプロピル)ホスフェートに発癌性が見いだされ,それぞれ使用が禁止されるに至っている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android