防災リテラシー(読み)ぼうさいりてらしー

日本大百科全書(ニッポニカ) 「防災リテラシー」の意味・わかりやすい解説

防災リテラシー
ぼうさいりてらしー

災害に遭遇したとき、目の前の状況に対して適切に行動し、想定外の事態から自分自身を救う能力のこと。防災と英語のリテラシーliteracyを組み合わせた造語である。リテラシーは「正しく読み書きができる能力」という意味で、広義に「生きる力」と解釈されている。地震や津波のような突発的な災害にあったときのための防災の知識や技術を養うことを、防災リテラシー教育、防災リテラシーの向上とよぶ。

 東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手県釜石(かまいし)市では、4階建ての校舎すべてが津波で水没した釜石東中学校の防災教育が「釜石の奇跡」とよばれて注目された。それは「津波が来たら他人に構わず、てんでんばらばらに逃げろ」と言い伝えられてきた「津波てんでんこ」に基づく防災教育である。震災のとき、学校にいた生徒はこの言い伝え通り、1.5キロメートルほど離れた小高い峠まで各自が走って逃げたため、全員が助かった。東日本大震災以前から同中学校では防災教育の時間を毎週設けており、年3回の避難訓練も実施していた。

 東海東南海地震南海地震首都直下型地震など、日本で想定されている大規模広域災害の備えとして、公的な援助限界という観点からも、釜石市のような住民自身の自助力や共助力を高めておく防災リテラシー教育が重要になると想定されている。同時被災する多くの人たちや自治体が的確に行動できるように、正確な地震災害の想定をしたうえで、防災の知識や技術を養っておく訓練がたいせつである。

[編集部]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android