阿古屋松(読み)あこやのまつ

精選版 日本国語大辞典 「阿古屋松」の意味・読み・例文・類語

あこやのまつ【阿古屋松】

謡曲脇能物廃曲。世阿彌作。陸奥阿古屋の松に案内された藤原実方の夢の中に塩釜明神が現われ、松の徳をたたえる。

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改訂新版 世界大百科事典 「阿古屋松」の意味・わかりやすい解説

阿古屋松 (あこやのまつ)

(1)平曲曲名。平物(ひらもの)。フシ物。謀反の罪で新大納言成親は備前に流され,その子藤原成経も清盛に召喚された。成経が3歳の子を抱き寄せて,成長の後は出家して弔いをしてくれと言うとうなずいたので,みな涙を流した(〈折リ声・中音〉)。成経は備中に流されたので,備前の父の配所を聞くと片道12~13日の遠さと答えられ,備中・備前は元来は同国なのにわざとごまかすのかと慨嘆した(〈折リ声〉)。昔は出羽・陸奥も同国で,陸奥に流された藤原実方(さねかた)の中将が名所の阿古屋松を探したとき,出会った老人に聞くと,陸奥は昔の国名で今の出羽にあるのだと言われ,国を越えて見に行ったという(〈中音・初重(しよじゆう)〉)。(2)能の曲名。四番目物。非現行演目。世阿弥作だが古作の改作か。シテ塩竈(しおがま)明神の神霊。陸奥に下った実方(ワキ)が,木樵(きこり)の老人(前ジテ)に阿古屋松を尋ねると,出羽の国にあるのだと言って案内し,実は自分は塩竈明神だと告げて去る。夜に入ると明神が気高い老体の神姿(後ジテ)を現し,松のめでたいいわれを説き(〈クセ〉),舞を舞い(〈序ノ舞〉),暁とともに消え去る。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「阿古屋松」の解説

阿古屋松
(通称)
あこやのまつ

歌舞伎浄瑠璃外題
元の外題
傾城阿古屋の松
初演
宝暦9.春(京・辰上政吉芝居)

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