阿武隈変成帯(読み)あぶくまへんせいたい(英語表記)Abukuma metamorphic belt

改訂新版 世界大百科事典 「阿武隈変成帯」の意味・わかりやすい解説

阿武隈変成帯 (あぶくまへんせいたい)
Abukuma metamorphic belt

茨城県日立地方から福島市東方に至る阿武隈高地は,大部分が花コウ岩類と変成岩からなり,その北方地域を含めて,阿武隈変成帯と呼ばれる。変成岩は福島県南東部の御斎所(ございしよ)街道沿いに最も広く分布し,東半部は緑色片岩を主とする御斎所変成岩,西半部は雲母片麻岩を主とする竹貫(たかぬき)変成岩からなる。これら一連の変成岩類は,ケイ線石-紅柱石タイプの低圧型変成相系列の典型として世界的に著名であるが,より古期の中圧型変成岩が複変成作用をこうむったとする見解もある。源岩の時代は不明。花コウ岩類は,花コウ岩,花コウセン緑岩,セン緑岩,斑レイ岩などからなる複成底盤をなし,一部にミグマタイトを伴う。花コウ岩類や変成岩の放射年代はほとんど1億年前後(白亜紀中期)。地体構造上の位置づけについては諸説がある。
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百科事典マイペディア 「阿武隈変成帯」の意味・わかりやすい解説

阿武隈変成帯【あぶくまへんせいたい】

阿武隈高地の主部を占め,広義の阿武隈変成岩の分布によって示される変成帯。大量の花コウ岩類が分布する。変成岩類は御斎所(ごさいしょ)・竹貫(たかぬき)地域におもに分布。この地域の変成岩は東部がおもに苦鉄質岩起源で御斎所変成岩と,西部がおもに砂泥質岩起源で竹貫変成岩と呼ばれている。変成作用や変成時期については,単一の変成作用(白亜紀に低圧型の変成作用)とする考えや複数の変成作用(低圧型の前にラン晶石―ケイ線石型の変成作用)を受けているとする考えがある。また西南日本の領家帯または宇奈月帯の延長とする説もある。変成岩類や花コウ岩類の放射年代は白亜紀。

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