陰刻(読み)いんこく

精選版 日本国語大辞典 「陰刻」の意味・読み・例文・類語

いん‐こく【陰刻】

〘名〙
文字絵画凹形に彫り込むこと。⇔陽刻。〔現代術語辞典(1931)〕
② (形動) 陰気できびしいこと。暗くきびしいこと。またそのさま。
行人(1912‐13)〈夏目漱石塵労「陰刻(インコク)な冬が彼岸の風に吹き払はれた時」 〔新唐書‐酷吏伝・崔器〕

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デジタル大辞泉 「陰刻」の意味・読み・例文・類語

いん‐こく【陰刻】

[名](スル) 文字や絵画などをくぼませて彫ること。⇔陽刻
[形動][文][ナリ]陰気で寒々としたさま。
「―な冬が彼岸の風に吹き払われた時」〈漱石行人

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「陰刻」の意味・わかりやすい解説

陰刻
いんこく
hollow relief

彫刻用語。陽刻に対する技法で,くぼみ彫,沈み彫ともいう。中王朝時代以後のエジプト美術多くの遺例がみられる。イタリア語インタリオも陰刻を意味する。

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世界大百科事典(旧版)内の陰刻の言及

【浮彫】より

…彫刻の浮出しの程度,換言すれば奥行き空間の圧縮度に応じて,高浮彫alto rilievo,半浮彫(中肉浮彫)mezzo rilievo,低浮彫(薄肉浮彫)basso rilievoに分類される。これらは,いずれも彫刻が背景面より突出するいわゆる〈陽刻〉に属するが,浮彫の特殊な例としては,逆に背景面より彫刻が沈む〈陰刻〉,あるいは〈沈み彫〉があり,円筒印章の場合などは完全な陰刻の例であり,古代エジプトで慣用された手法では,彫刻そのものは低浮彫の陽刻であるが,輪郭線の部分で彫り込まれて,ぜんたいが背景面より沈んでいる,いわゆる〈くり型浮彫〉がある。 浮彫は,旧石器時代以来,聖所,神殿,聖堂に施される作品をはじめとして,祭壇,記念碑,工芸品,家具,印章など,多様な用途をもち,材料としては,石,土,木,金属,貴石,スタッコなど,技法としては,彫込み,彫塑,木型などによる打出し,鋳造などの技術が用いられる。…

※「陰刻」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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