デジタル大辞泉
「隔」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
へだて【隔】
① へだてること。二つの物や場所の間にあって、それらをさえぎること。
さかいをすること。また、そのもの。しきり。
※万葉(8C後)一三・三三三九「重波
(しきなみ)の寄する
浜辺に
高山を 部立
(へだて)に置きて」
※今鏡(1170)二「東宮におはしましける時、世のへだて多くおはしましければ」
③ 時間的に離れていること。間があくこと。
※源氏(1001‐14頃)
真木柱「
一夜ばかりのへだてだにまた珍しさまさりて覚え給ふ」
④ あれとこれとに分けること。
区別。また、わけへだてをすること。
差別。
※虎明本狂言・宗論(室町末‐近世初)「此文をきく時は、
法華もみだもへだてはあらじ」
⑤
気持のうえで、他との間に距離や壁をつくること。うちとけないこと。また、仲の悪いこと。
※源氏(1001‐14頃)
夕顔「かばかりにて、へだてあらむも、事のさまに違ひたり」
へだ・てる【隔】
〘他タ下一〙 へだ・つ 〘他タ下二〙
① 間に距離やさえぎるものを置く。間にあって
両者を離す。
※万葉(8C後)一八・四〇七三「月見れば同じ国なり山こそは君が辺を敝太弖(ヘダテ)たりけれ」
※源氏(1001‐14頃)
帚木「御几帳へだてておはしまして、御物語聞え給ふを」
② 二つの行為の間に時間的な距離を置く。
年月を過ごす。
※大唐三蔵玄奘法師表啓平安初期点(850頃)「思
(おもひ)を研
(みか)き、時を淹
(ヘタテ)、未だ惣畢すること能は
ざりき」
③ 気持のうえで、他との間に距離や壁をつくる。遠ざける。また、わけへだてをする。
※源氏(1001‐14頃)
澪標「かねてよりへだてぬ中と慣はねど別れは惜しき物にぞありける」
④ 連歌俳諧で、
前句に用いた語または類似語を、すぐ後の句に用いないで間に句を置く。去る。
※
連理秘抄(1349)「可
レ隔
二三句
一物 月 日 星」
へだた・る【隔】
〘自ラ五(四)〙
① 間に距離、また、山や川などのさえぎるものがあって離れている。転じて、遠ざかる。離れる。
※万葉(8C後)四・六〇一「情ゆも吾は思はずき
山河も隔
(へだたら)なくにかく恋ひむとは」
※
更級日記(1059頃)「霧ひとへへだたれるやうに」
② 間に時間があって離れている。
月日が立つ。年月が過ぎる。
※源氏(1001‐14頃)
賢木「月日もへたたりぬるに」
③ 関係がうとくなる。疎遠になる。
※源氏(1001‐14頃)賢木「
御中もへだたりぬるを」
④ 質や等級に差異がある。また、物事の間にある違いがある。
※長谷川君と余(1909)〈夏目漱石〉「かねて想像してゐた所を、あまりに隔(ヘダ)たってゐたので」
⑤ 二者の間にさえぎってはいる。
※高野本平家(13C前)七「主を討たせじと中にへたたり、斎藤別当にむずと組む」
へな・る【隔】
〘自ラ四〙
① 間に物があってさえぎられる。へだたる。へだてている。
※万葉(8C後)八・一四六四「春霞たなびく山の隔(へなれ)れば妹に逢はずて月そ経にける」
② 両者の間がへだたる。遠く離れる。
※万葉(8C後)一五・三七五五「うるはしと吾(あ)が思(も)ふ妹を山川を中に敝奈里(ヘナリ)て安けくもなし」
へだたり【隔】
〘名〙 (動詞「へだたる(隔)」の連用形の名詞化)
① 空間的、時間的に距離があることやその度合。また、物事の間に差があることやその度合。懸隔。相違。
※東大寺諷誦文平安初期点(830頃)「浄土と穢土との隔(ヘタタリ)は何ぞ」
② 気持の上で他と距離が生じること。親しみがうすれること。うちとけないこと。
※源氏(1001‐14頃)初音「へだたり多くあやしきが、うつつの心地もし給はねば」
へだし【隔】
〘名〙
① (「へだち(隔)」に当たる上代東国方言) 仕切り。
※万葉(8C後)一四・三四四五「水門の葦が中なる玉小菅刈り来わが背子床の敝太思(ヘダシ)に」
② 床の下に敷くもの。
※俗語考(1841)床のへだし「辺土の田舎にて、床の下敷のへだしといふ〈略〉床の隔ち也といへどさだめがたし」
へだ・つ【隔】
※万葉(8C後)五・八六六「遙遙(はろはろ)に思ほゆるかも白雲の千重に辺多天(ヘダテ)る筑紫の国は」
へだち【隔】
〘名〙 (動詞「へだつ(隔)(一)」の連用形の名詞化) =
へだたり(隔)
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