雀の発心(読み)すずめのほっしん

改訂新版 世界大百科事典 「雀の発心」の意味・わかりやすい解説

雀の発心 (すずめのほっしん)

御伽草子。《雀の草子》《小藤太物語》とも。大和国みやの郡の山里に小藤太という雀がいた。みどり子をもうけたが,夫婦が餌を求めに出た際に蛇に食われてしまう。悲しむ小藤太を鳥どもが和歌を詠(よ)んで慰めるが,小藤太夫婦はわが子の後世(ごせ)を弔うべく遁世(とんせい)しようと語り合う。女房は〈あまかさき〉の庵室で出家し,一心に念仏を唱えついに往生する。小藤太も弥陀が峰の梟(ふくろう)〈そん阿弥陀仏(あみだぶ)〉の庵室で出家,諸国を巡り,洛中洛外の諸寺を参拝し,北野社に参った際,村雨(むらさめ)に遇ったのを縁としてそこに庵室を結び仏道修行にはげむ(赤木文庫蔵本による)。室町後期の成立と考えられる古絵巻で,多少叙述を異にする伝本を存し,日本民芸館蔵本,慶応義塾大学図書館蔵本などが知られている。

 諸鳥が雀に贈る和歌は画面に書き込まれており,踊念仏の条では〈雀百まで踊り忘れぬ〉の諺(ことわざ)のおこりを説く。筋の展開に新味はないが,短編ながら異類物の中での佳品といえる。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android