雁爪(読み)がんづめ

精選版 日本国語大辞典 「雁爪」の意味・読み・例文・類語

がん‐づめ【雁爪】

〘名〙 (形が雁の爪に似ているところからいう)
鉄製熊手状のもので、三~五本の曲がった爪をもっている農具。田の草をとるのに用いる。指先にはめる、琴の爪に似たものもある。かにづめ。《季・夏》
葉隠(1716頃)五「銘々船に、相かぎ・雁爪用意の事」
鉱石石炭をかき寄せるのに用いる道具。①に似ているが、先端が曲がっていない。

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デジタル大辞泉 「雁爪」の意味・読み・例文・類語

がん‐づめ【×雁爪】

《形が雁の爪に似るところから》
3~5本の内側に曲がった鉄製の爪のついた農具。除草などに用いる。
鉱石・石炭などをかき集めるのに用いる道具。1に似るが、爪は曲がっていない。

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改訂新版 世界大百科事典 「雁爪」の意味・わかりやすい解説

雁爪 (がんづめ)

熊手,田熊手などとも呼ばれる。備中ぐわの柄を短くしたような水田の中耕用農具。これによる作業をがんづめ打ちという。つめは4本前後で,付け根付近で曲げられており,このつめと基部および柄への取付け部とも厚手の平鉄で一体に作られたものが多い。柄の長さは15cm程度である。この柄をつかみ,しゃがんだ姿勢で株間の土を打ち除草するが,同時に土がかくはんされることによって土中空気を入れ,あるいは根を切って過繁茂になった株の生長抑制したり,新根の発根を促す効果がある。江戸時代の後半から使われだしたが,幕末になっても一般に普及していたのは北九州畿内だけであった。その後,他の地域にも普及していくが,明治中期に発明された田打車にしだいにとって代わられた。がんづめの出現した当時は,明治以降今日に至るような正条植えではなかったので,柄を短くして,しゃがまねば株間を打つことができず,つらい作業に甘んじねばならなかったのである。
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百科事典マイペディア 「雁爪」の意味・わかりやすい解説

雁爪【がんづめ】

水田中耕除草用農具の一つ大蔵永常の《農具便利論》(1822年)に,〈田の一ばん草二ばん草をとるに専ら用いる〉とあるのが文献上の初見。形状は熊手様の爪を直角に曲げ,15cmくらいの短い柄をつける。明治以後全国に普及したが,水田中耕除草機の出現で用いられなくなった。→農具
→関連項目中耕

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「雁爪」の意味・わかりやすい解説

雁爪
がんづめ

熊手状の鉄爪に 15cmぐらいの柄をつけた水田の中耕用具。がんの爪に似ていることからこの名がある。おもに稲株間の土をかき起すのに用いるが,操作の姿勢にきわめて無理があり非能率的なため近年は使用されなくなった。草取りや,鉱石をかき集める用具として使われることもある。

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世界大百科事典(旧版)内の雁爪の言及

【中耕】より

…一般に中耕は集約的農業で実施されるもので,中耕の効果の著しくあらわれる作物は中耕作物,耨耕(じよつこう)作物などと呼ばれる。 日本の水田では,江戸時代から腰を曲げて雁爪(がんづめ)(刃が3~5本に分かれた小型のくわ)を田面に打ち込む中耕が行われ,明治末以降は水田の中を固定爪や回転爪を押して表土をかくはんする中耕除草機が普及してきたが,中耕は夏季の最大の重労働となっていた。水田における中耕の効果については,雑草防除のほかに,地温の上昇,土中への酸素の導入,土中の有害ガスの除去,土中の有機態窒素の無機化,一時的断根による新根発生の促進などが,水稲の生育に良い結果をもたらすとの説が唱えられていた。…

※「雁爪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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