雄藩(読み)ゆうはん

精選版 日本国語大辞典 「雄藩」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐はん【雄藩】

〘名〙 勢力の強大な藩。大藩
※宝覚真空禅師録(1346)乾・陞座・為近江太守直庵周忌追薦「随勅侍内禁、蒙恩鎮雄藩耳」 〔旧唐書‐厳綬伝〕

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デジタル大辞泉 「雄藩」の意味・読み・例文・類語

ゆう‐はん【雄藩】

勢力の強大な藩。雄鎮

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「雄藩」の意味・わかりやすい解説

雄藩
ゆうはん

幕末・維新期に活躍した有力な藩。語句の意味は、勢力の雄大な藩である。しかし、歴史的な概念としては、幕藩体制下の封建的矛盾の拡大の進行のなかで、一方ではその割拠旗頭となりつつ、他方ではその基礎を解体する方向に進み、新しい統一国家へのてこの役割を果たした藩をいう。しかも、その藩は、藩としての指導理念をもっていた。具体的には、越前(えちぜん)(福井)、水戸薩摩(さつま)、肥前(佐賀)、尾張(おわり)、因州(鳥取)、宇和島土佐長州(萩(はぎ))などがあげられるが、とりわけ薩長土肥は明治維新を推進した藩として「西南雄藩」とよばれる。

 これら雄藩の台頭は、天保(てんぽう)の改革ないし安政(あんせい)の改革における成功を背景としているが、それだけにこれらの藩内の政争は激しいものがあり、その激しさのなかで人材が登用され、内政・外交の厳しい政治情勢のなかで、新しい統一国家への理念が鍛えられていった。そして、幕末期の尊王攘夷(そんのうじょうい)運動、公武合体運動、あるいは倒幕運動公議政体論などの政治運動や政治理念の展開する過程で、これらの雄藩は、あるときは徳川幕府の側につき、あるときはそれへの対決の姿勢を強めていった。なかでも西南雄藩が、幕末政局をリードして倒幕運動を進め、維新政府実現の中心勢力となったので、創出された近代天皇制国家において、これらの雄藩は藩閥を生み出し、天皇制権力の中枢を握る存在となった。

[田中 彰]

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普及版 字通 「雄藩」の読み・字形・画数・意味

【雄藩】ゆうはん

有力な藩侯。唐・柳宗元〔柳公綽に代りて上任を謝する表〕其の陋をれ、委するに雄を以てす。(おも)ふに綏馭(すいぎよ)の能無く、(あやま)つて澄の寄を忝(かたじけ)なうせらる。

字通「雄」の項目を見る

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旺文社日本史事典 三訂版 「雄藩」の解説

雄藩
ゆうはん

幕末,政局に大きな発言権をもった藩
薩摩・長州・肥前・土佐・宇和島などの西南地方の外様藩や,水戸・越前などの親藩をさす。

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