電子スピン(読み)デンシスピン

化学辞典 第2版 「電子スピン」の解説

電子スピン
デンシスピン
electron spin

歴史的にはS.A. GoudsmitとG.E. UhlenbeckがナトリウムのD線の二重線を説明するために,1925年に提案した電子属性.電子には空間的な三次元の運動のほかに,スピンとよばれる自転自由度があり,これが電子の磁気モーメントの原因であると考えた.この考えはただちにほかの粒子にも拡張され,原子核に対しては核スピンとよぶようになった.電子スピンの量子数s = 1/2で,外部磁場のないときは二重に縮退している(2s + 1 = 2)が,外部磁場が作用すると縮退が解け,二つの準位に分裂する.磁場が0.3 T 程度のときには2準位間のエネルギーがマイクロ波に相当するので,電子のスピン状態の変化がマイクロ波の吸収放出を起こす.すなわち,共鳴することになる.これが電子スピン共鳴である.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電子スピン」の意味・わかりやすい解説

電子スピン
でんしスピン
electron spin

電子のもっている内部自由度の1つ。原子スペクトルおよび元素周期律を説明するため,1924年に W.パウリが初めて導入した。量子力学では,電子スピンを表わす演算子は (h/4π)σ ( hプランク定数 ) と表わされる。 σ は三次元回転群の生成演算子であり,次の2行2列の行列で表わされる。
これをパウリのスピン行列という。電子スピンによる磁気モーメントとの関係はg因子で与えられる。電子スピンはディラック方程式により自然に導かれる。 (→スピン )

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