電撃戦(読み)でんげきせん(英語表記)Blitzkrieg[ドイツ]
blitz

改訂新版 世界大百科事典 「電撃戦」の意味・わかりやすい解説

電撃戦 (でんげきせん)
Blitzkrieg[ドイツ]
blitz

第2次大戦の初期,機甲部隊主力とするドイツ軍が空軍の密接な協力のもと,機動力を発揮して短期間に敵を圧倒した作戦。機甲部隊とは,戦車部隊が戦闘力の主体となり,これに装甲人員輸送車または装甲歩兵戦闘車によって機械化された歩兵部隊,自走または牽引の砲兵部隊その他の部隊をもって編成された諸兵連合の車両化された部隊をいう。ドイツは,第1次大戦末期に連合軍の戦車に苦しめられた経験から戦車の威力を高く評価し,1935年,再武装にあたって機甲部隊を編成し,独特の戦術理論を研究した。39年9月のポーランド作戦では,新鋭の機甲戦力を中核としたドイツ陸軍が空軍の強力な支援のもと,旧式編成装備のポーランド軍を,動員完結の余裕を与えず突破分断,包囲し,18日間で完全に撃破した。40年5月,ドイツ機甲部隊主力はアルデンヌ森林地帯を突破して奇襲進攻し,わずか6週間でオランダベルギーフランスを敗北させた。その後,ドイツ軍は北アフリカ,ソビエト戦線でも緒戦の電撃戦には成功したが,連合国側はドイツ軍に質と量においてまさる部隊を編成し,新しい戦法で反撃したので,ドイツ軍は敗北した。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「電撃戦」の意味・わかりやすい解説

電撃戦
でんげきせん
lightning war; Blitzkrieg

戦車,地上直援機を中心に一挙に敵陣を突破する機動戦。空軍の協力のもとに,装甲部隊が敵の第一線の一部を集中的に攻撃,そこを突破して,抵抗する敵を後続歩兵部隊にゆだね,敵の後方深く進出して心理的に敵をゆさぶり,敵陣を分断する戦法。ドイツ軍が 1938年のスペイン内乱で試み,第2次世界大戦のきっかけとなった 1939年のポーランド侵入で,初めて大規模に行なった。その後 1940年にベルギー,オランダ,フランスに対してもこの戦法がとられ,エルウィン・ロンメルも北アフリカでこの戦法を採用した。1967年の第3次中東戦争(→六日戦争)で,イスラエルがとったのもこの戦法といわれる。多国籍軍が 100時間で勝利を得た 1991年の湾岸戦争も電撃戦法の典型であった。

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山川 世界史小辞典 改訂新版 「電撃戦」の解説

電撃戦(でんげきせん)
Blitzkrieg

ドイツ軍が1939~41年に,ポーランド,フランス,ユーゴスラヴィア,ギリシアに侵攻し,予想外の短期戦で勝利したことから,ドイツ軍の戦術・戦法に与えられた名称。空軍と機甲部隊の一挙投入に特徴があり,対ソ連奇襲作戦ではこの戦法にもとづいていたが,頓挫した。

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