電気抵抗器(読み)でんきていこうき(英語表記)resister

改訂新版 世界大百科事典 「電気抵抗器」の意味・わかりやすい解説

電気抵抗器 (でんきていこうき)
resister

抵抗器,あるいは抵抗ともいう。電気回路に接続して必要な電気抵抗を得るために使用する器具部品。抵抗値(Ω)と許容消費電力(W)によって特徴づけられる。使用目的からは,電力用の大型なものと,電子回路用の小型なものに大別でき,また機能面からは抵抗値を加減できる可変抵抗器と,一定の抵抗値を与える固定抵抗器に分類される。

抵抗器は一般に,電気抵抗を生ずる抵抗体,それを支持する絶縁基体,回路に接続するための端子,これらを外界から守るための保護部分の四つからなる。また可変抵抗器では,抵抗値を加減するのに必要な回転やしゅう動の機構を備えている。

抵抗器の性能をもっとも特徴づけるもので,(1)抵抗率が高いこと,(2)抵抗値の温度による変化が小さいこと,(3)耐腐食性が大きいこと,(4)高温まで使用できること,(5)機械的強度が大きいこと,(6)寿命が長いことなどの特性が要求される。材料としては金属性のものと非金属性のものがあるが,金属単体ではこれらの条件をなかなか満足できないので,多くは合金が使用される。代表的なものはニッケル-クロム(ニクロム),銅-ニッケルの合金などで,標準抵抗器などには,銅-マンガン-ニッケル(マンガニン)が使用される。非金属では炭素が代表的であるが,半導体材料も多く使用され,また水や電解液などの液体が用いられることもある。

数Wから数十kWに及び,使用目的によって種々の形状・構造をとるが,いずれも温度上昇に対して十分な考慮が払われ,自然空冷,強制空冷,あるいは水冷などの方法が適用される。

電子回路の抵抗素子のうち集積回路に置き換えられるものも多いが,しかし抵抗器は相変わらず電子回路を構成する主要かつ基本的な部品であることに変りはない。種類としては細い合金抵抗線をボビンに巻きつけた巻線抵抗器,金属や炭素の薄膜円筒形や平面状の絶縁基体上に形成して抵抗体とした金属薄膜抵抗器や炭素皮膜抵抗器,炭素粉末などの抵抗材料にフェノール樹脂,ガラスなどの粉末を混合して鉛筆の芯のように加圧成形したソリッド抵抗器が主要なものである。集積回路の発達により電子回路の実装密度の向上と消費電力の低減は著しく,これに対応して抵抗器も小型化の傾向をたどっている。またプリント基板に,リード線のないチップ型の小型抵抗器を高密度に自動装着し,あるいはプリント基板に直接抵抗素子を印刷する技術も開発され,さらにはまた,金属薄膜抵抗や厚膜抵抗などの素子を1枚の絶縁基板上に複数個集積して抵抗回路網としたものも製造され,電子機器実装密度の向上に役だっている。

電子機器の調節機構にとって可変抵抗器は不可欠のものである。抵抗値が常時可変できるもののほか,いったん調節後は長期間固定される半固定抵抗器と呼ばれるものもある。可変機構としては回転,あるいは直線しゅう動が主体であり,一度に2素子以上を連動して可変するもの,また,多回転にして可変精度を高めたものも広く使用されている。抵抗体は本質的に固定抵抗器の場合と変わらないが,可変操作に伴い雑音を発生しないようなくふうが払われている。また特殊な可変抵抗体にサーミスターバリスターがある。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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