電波吸収体(読み)でんぱきゅうしゅうたい(英語表記)electromagnetic wave absorber

改訂新版 世界大百科事典 「電波吸収体」の意味・わかりやすい解説

電波吸収体 (でんぱきゅうしゅうたい)
electromagnetic wave absorber

電波が反射せずにすべてのエネルギーを吸収する,すなわち熱に変えてしまうようにくふう,設計されたもの。一般に電波はそれまで伝搬していた空間と性質の異なる物にあたると,一部のエネルギーが反射されるが,それが望ましくない場合があり,電波吸収体はテレビ電波のゴースト対策や軍事利用などが検討されている。用いられる材料は電磁エネルギーを熱に変える特性をもつことが必要で,通常は電気的なものとしてカーボン粉末発泡スチロールウレタンまたはゴムなどに混入させたもの,磁気的なものとして磁性材料である焼結フェライトまたはその粉末をゴムや塗料に混入したものが用いられている。吸収すべき電波の周波数や物にあたるときの入射の方向などによって当然電波吸収体の設計は異なってくるが,ある周波数f0上下の狭い帯域のみで動作するもの(狭帯域型)と,ある下限周波数f0より上の周波数f(≧f0)ではどこでも動作するもの(広帯域型)が考えられている。狭帯域型(例えばテレビ帯だけで動作する)においては,f0が7GHz以下ではフェライト系材料,7GHz以上ではカーボン系材料が,同一厚さの条件下では特性がよい。フェライト系材料においてf0≦4GHzでは必要な厚さdは約8mmであり,それ以上ではd=(25~30)mm/f0(GHz)である。カーボン系の厚さはd=(9~17)mm/f0(GHz)となっている。

 広帯域型でかつ入射角が垂直入射付近(±40°)にかぎられる場合はフェライトとカーボン系材料の空間的併用が望ましく,それに必要な厚さdは0.26λ0(λ0は周波数f0に対応する波長)であるが,入射角が±70°と広くなる場合は,カーボン系材料のみの構成でよく,厚さdは1.6λ0である。前に述べたように現在テレビ帯の電波吸収体の厚さdは約8mmであるが,これを1mm程度にする研究がすすめられている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android