霰酒(読み)あられざけ

精選版 日本国語大辞典 「霰酒」の意味・読み・例文・類語

あられ‐ざけ【霰酒】

〘名〙 奈良特産みりんの名。白いかすが混じっているのを、あられに見立てていう。また、みりんに餠あられを加えたものともいう。みぞれざけ。《季・冬》
多聞院日記‐天正三年(1575)一二月一八日「十後よりあられ酒樽一つ可調下之由被申上了」

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デジタル大辞泉 「霰酒」の意味・読み・例文・類語

あられ‐ざけ【×霰酒】

あられ餅を、焼酎しょうちゅうにつけて干すことを数回繰り返してから、みりんの中に入れて密封・熟成させた酒。奈良の特産。みぞれ酒。 冬》「炉びらきや雪中庵の―/蕪村

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「霰酒」の意味・わかりやすい解説

霰酒
あられざけ

奈良市特産の酒。霙酒(みぞれざけ)ともいう。酒のなかに糯米(もちごめ)の麹(こうじ)を浮かしたもので、慶長(けいちょう)年間(1596~1615)に、奈良在住の町医者糸屋宗仙(一説には酒造家浅田某という)が、猿沢(さるさわ)の池面にあられが降るようすを見て創案したという。製法は、のし餅(もち)を細かく刻み、それを焼酎(しょうちゅう)に浸し漬けては乾燥させ、これを繰り返してできるあられ様のものを酒に加える。いまでも奈良土産(みやげ)として名高く、俳諧(はいかい)では冬の季語とする。

[宇田敏彦]

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世界大百科事典(旧版)内の霰酒の言及

【あられ(霰)】より

…文献に名が見られるのは江戸時代のはじめごろからであるが,当時もいまと同じように,のし餅や海鼠(なまこ)餅を切って作ったらしく,井原西鶴の《武道伝来記》巻一(1687)には〈搔餅(かきもち),霰餅(あられ)をきざみゐしが〉という表現が見られる。なお,日本料理ではこまかいさいの目に切ったものをあられと呼び,また,かけそばに貝柱を加えたものをあられそばというが,室町期には〈霰酒(あられざけ)〉をあられということが多かった。霰酒は奈良の特産として知られたみりんの一種で,もろみが白く残るのでこの名があるという。…

※「霰酒」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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