青侍(読み)あおさぶらい

精選版 日本国語大辞典 「青侍」の意味・読み・例文・類語

あお‐さぶらい あをさぶらひ【青侍】

〘名〙
① (青い袍(ほう)を着たところから) 公家の家に仕えた六位の侍。あおざむらい
② (「青」は未熟の意か) 身分の低い若侍。あおざむらい。
※中右記‐永久三年(1115)八月一二日「一夜肥後守国資倉中窃盗入。嫌疑者彼家青侍也。則搦取也」
浮世草子好色一代女(1686)一「去(さる)御方の青侍(アオサフラヒ)其身はしたなくて、いやらしき事なるに」

せい‐し【青侍】

〘名〙 (「青侍(あおさぶらい)」の音読) 公家(くげ)に仕える六位の侍。六位は青色の袍(ほう)を着たところからいう。また、位の低い若侍。
※高野本平家(13C前)五「源中納言雅頼卿のもとに候ける青侍(セイシ)が見たりける夢も、おそろしかりけり」

あお‐ざむらい あをざむらひ【青侍】

〘名〙 (「あおさむらい」とも) =あおさぶらい(青侍)日葡辞書(1603‐04)〕

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デジタル大辞泉 「青侍」の意味・読み・例文・類語

あお‐さぶらい〔あをさぶらひ〕【青侍】

身分の低い若侍。あおざむらい。
一重に薄き―通りかかるを走り寄り」〈浄・彦山権現
《青色のほうを着たところから》公家に仕える六位の侍。あおざむらい。〈日葡

せい‐し【青侍】

《「あおさぶらい」の音読》公家に仕える六位の侍。
「源中納言雅頼卿のもとに候ひける―が」〈平家・五〉

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改訂新版 世界大百科事典 「青侍」の意味・わかりやすい解説

青侍 (あおざむらい)

公家の家政機関に勤仕する侍の称。17世紀初頭に完成した《日葡辞書》にも,ほぼ同じ意味の解説がある。11世紀後半以降,貴族層の家柄の再編成が進行する中で〈侍〉階層が成立してくる。彼らは,公卿の家に侍として仕え,まれには五位以上に昇ることもあるが,基本的には六位層にとどまり,四位,五位への昇進を常のこととする〈諸大夫〉層より低く位置付けられていた。彼らのような六位層の者は,平安末期ごろから縹(はなだ)(うすい藍)色の位袍(いほう)を着用したが,このことから,彼らを青侍と呼ぶようになったとする説が有力である。また〈青〉を未熟の意味であるとし,年若く,かつ技量未熟な侍の称とする見解もある。用例は《中右記》《明月記》をはじめとする院政期以降の古記録や,《今昔物語集》《古今著聞集》《平家物語》《宇治拾遺物語》等々の文学作品にみられる。女性に関しては青女房,青女の用例がある。
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百科事典マイペディア 「青侍」の意味・わかりやすい解説

青侍【あおざむらい】

あおさぶらいとも。平安時代,公卿(くぎょう)に仕えた六位の侍。呼称由来は六位の位袍(いほう)が縹(はなだ)色(薄藍色)であるためとする説が有力で,また未熟の意からくるともいう。総じて年若く身分の低い侍を呼んだらしい。なお青侍の妻,さらに年若く身分の卑しい女房を青女房(あおにょうぼう)という。

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