青木ヶ原(読み)アオキガハラ

デジタル大辞泉 「青木ヶ原」の意味・読み・例文・類語

あおき‐が‐はら〔あをき‐〕【青木ヶ原】

山梨県富士山北西麓に広がる大原生林面積約30平方キロメートルで富士箱根伊豆国立公園に属する。貞観6年(864)の大噴火による溶岩流上に形成されたもので、鳴沢氷穴をはじめ溶岩トンネルが多くみられる。青木ヶ原樹海

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「青木ヶ原」の意味・わかりやすい解説

青木ヶ原
あおきがはら

山梨県、富士山北西麓(ろく)に広がる原始林。864年(貞観6)富士山中腹の長尾山(1424メートル)から噴出した溶岩流上にあり、南アルプスや秩父(ちちぶ)山地の原始林とは異なった特異な植生相を示し、ツガヒノキなどの針葉樹フジザクラカエデアセビなどの広葉樹が密生し、溶岩はコケに覆われている。西湖、精進(しょうじ)湖などの湖岸まで広がり、青木ヶ原樹海ともよばれる。富士河口湖町、鳴沢村(なるさわむら)にまたがり、国の天然記念物の指定を受けた富士山原始林を代表するもので、林内には生息する鳥獣の数が多いばかりでなく、溶岩のつくった風穴、氷穴などがあり、鳴沢熔岩樹型は特別天然記念物。その一部は観光地として開発されている。なお、一部溶岩が磁気を帯び磁石のきかない地帯があるので、奥へ入るのは危険である。

吉村 稔]


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改訂新版 世界大百科事典 「青木ヶ原」の意味・わかりやすい解説

青木ヶ原 (あおきがはら)

山梨県南部,富士山北西麓に広がる大樹林帯。富士河口湖町,鳴沢村にまたがる。標高900~1200m,周囲16km,面積30km2にわたって広がり,遠望すると海のように見えるところから青木ヶ原樹海と呼ばれている。成因は864年(貞観6)富士山の側火山,長尾山の噴火で大量の溶岩流(青木ヶ原丸尾(まるび))が流出した上に,伏流水などの影響で数百年を要して樹木が密生し,溶岩原上のため人手が入りにくく残ったとされる。溶岩流は山麓では掌状に広がり,御坂(みさか)山地に達して当時剗海(せのうみ)と呼ばれていた大湖に流れ込み西湖,精進(しようじ)湖の堰止湖を生じた。樹海には樹齢300年におよぶツガやヒノキが多く,それに混在してゴヨウマツ,ハリモミ,トウヒ,ミズナラなどからなる常緑針葉樹林で年間緑が絶えず,精進口登山道の両側約180mは富士山原始林の一部として天然記念物に指定されている。樹海の中には高さ20m前後の大木の下にソヨゴなどの常緑広葉樹,林床にはコケモモ,ツルシキミなどの低木が生えている。凹凸の多い溶岩原には鳴沢氷穴(天),富岳風穴(天)などの溶岩洞穴や,溶岩流が大木をなぎ倒してつくった鳴沢溶岩樹型(特天)などが見られ,青木ヶ原の前身にも広大な森林が広がっていたことがわかる。
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百科事典マイペディア 「青木ヶ原」の意味・わかりやすい解説

青木ヶ原【あおきがはら】

富士山北西麓の原野で,山梨県西八代(にしやつしろ),南都留(みなみつる)2郡に属する。864年の噴火で流出した青木ヶ原丸尾の溶岩流が風穴,氷穴,樹型を生じ,溶岩流上は青木ヶ原樹海と呼ばれる混交林の大原始林をなし,いずれも天然記念物。溶岩流末端部には堰止(せきとめ)湖の西(さい)湖精進(しょうじ)湖本栖(もとす)湖がある。樹海展望ルートは富士パノラマライン(国道139号)。
→関連項目富士山

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「青木ヶ原」の意味・わかりやすい解説

青木ヶ原
あおきがはら

山梨県南部,富士山北西麓にある溶岩流の高原。貞観6 (864) 年,富士山の寄生火山長尾山の噴火によって形成された。標高 900~1200m。青木ヶ原樹海と呼ばれる 30km2の原生林があり,南半はヒノキ,北半はツガが優占し,多種の鳥獣が生息。特別天然記念物鳴沢溶岩樹型のほか風穴,氷穴と呼ばれる洞窟など,溶岩流地形の奇勝に富む。

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世界大百科事典(旧版)内の青木ヶ原の言及

【垂直分布】より

…例えば,ノゴマは北海道の平地の草原にも大雪山の高山草原にも繁殖する。富士山の溶岩流の青木ヶ原では,標高900mの下部でも亜高山性,低温性のヒガラやコガラ,小哺乳類では高山性のヒメヒミズが分布し,火山砂のため高地性のヤチネズミの住まない2000mの高地まで低地性のスミスネズミが進出している。しかし,森林鳥類では一般に森林の垂直分布に従って近似の生息種が入れかわる。…

※「青木ヶ原」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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