非晶質金属(読み)ヒショウシツキンゾク(英語表記)amorphous metal

デジタル大辞泉 「非晶質金属」の意味・読み・例文・類語

ひしょうしつ‐きんぞく〔ヒシヤウシツ‐〕【非晶質金属】

アモルファス金属

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

改訂新版 世界大百科事典 「非晶質金属」の意味・わかりやすい解説

非晶質金属 (ひしょうしつきんぞく)
amorphous metal

原子配列に長範囲秩序のない金属。アモルファス金属,金属ガラスともいう。液体や気体状態からガラス転移点以下の温度に超急冷することによってつくられる。熱力学的には非平衡状態にあり,結晶化温度以上に加熱すると原子配列の規則的な結晶状態にもどる。不規則な原子配列をどのように特徴づけるかは学問的に最も興味ある問題である。作製法,急冷速度などによっても構造は変化し,実際のアモルファス構造を記述するには極限的な超急冷に対応する理想アモルファス構造と,それからのずれを表す非晶質度というパラメーターが必要である。非晶質金属は蒸着膜としては1950年代から知られているが,本格的に研究が開始されたのは70年代に入って増本健,チェンH.S.Chenらにより大きなテープ状試料が遠心急冷法によって得られるようになってからである。作製法としてはそのほかにめっき法,真空蒸着法,イオン注入法,スパッター法などがある。非晶質金属は金属-金属系(Cu-Zr,Ni-Nb,Fe-Zr,Mg-Zn,Gd-Co),金属-非金属系(Fe-B,Fe-P,Au-Si)の合金に大別される。これらの合金の一般的特徴として,強さ,硬さ,耐食性が非常に高く,優れた軟磁気特性高透磁率材料として磁気ヘッドに,誘電損の少ないことからトランスの鉄心材料として応用されている。このほかにもさまざまな工業的応用が見込まれており,超伝導性,水素吸蔵特性,触媒効果などが調べられている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

百科事典マイペディア 「非晶質金属」の意味・わかりやすい解説

非晶質金属【ひしょうしつきんぞく】

アモルファスamorphous金属とも。原子配列に,長範囲にわたる結晶をもたない金属。通常では,金属の固体は結晶になっているのに対して,非晶質金属では規則正しい原子配列が見られない。液体金属のまま冷却,固化したような状態なので,異方性を示さず,照射損傷も少なく,通常の金属より強靭(きょうじん)性,耐食性にすぐれ,軟磁性材料として良好な特性を示すものがある。液体急冷法,真空蒸着法,電気めっき法などでつくる。1970年ころから本格的な開発が進められ,Cu-Zr,Ni-Nbなどの金属‐金属系,およびFe-B,Fe-Pなどの金属‐非金属系のアモルファス合金が生み出されている。

出典 株式会社平凡社百科事典マイペディアについて 情報

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android