本来食べられるにもかかわらず、廃棄される食品。食料ロス、フードロスともいわれる。農林水産省の2016年(平成28)調査では、日本で1年間に廃棄される食品由来の廃棄物はおよそ2759万トンあり、このうち食品ロスは643万トンにのぼる。これは国連世界食糧計画(WFP)の援助食糧のほぼ2年分に匹敵する。節分に食べる「恵方(えほう)巻き」の大量廃棄などが社会問題化し、日本では2019年(令和1)に国、自治体、企業、消費者をあげて削減に取り組む食品ロス削減推進法(正式名称「食品ロスの削減の推進に関する法律」、令和元年法律第19号)が施行された。
国連食糧農業機関(FAO)が2011年に発表した試算によれば、世界で人が消費するために生産されている食料の3割を超える13億トンが、毎年失われ、あるいは捨てられている。食料不足や穀物相場高騰などの懸念が世界的に高まっており、食品ロスをいかに減らすかが大きな課題である。日本の食品ロスは小売店、外食産業、食品メーカーなどの事業系と家庭系とに大別され、事業系ロスが約352万トン、家庭系は約291万トンにのぼる。事業系ロスのおもな原因は、飲食店や旅館・ホテルでの食べ残し、コンビニやスーパーなどの賞味期限前の撤去、製造段階での規格外品などの過剰廃棄がある。とくに、食品メーカーは賞味期限の前半3分の1の期間しか商品を小売店へ納品できず、小売店も賞味期限の前半3分の2の期間しか消費者に販売できないという商習慣「3分の1ルール」があり、これが食品ロス発生の大きな原因となっている。また家庭系では食べ残し、使い残し、賞味期限切れなどによる直接廃棄がロスを生んでいる。いずれも、鮮度を過度に重視する消費行動や商慣習が、食品ロスを増やす要因となっている。
日本政府は食品ロス削減推進法に基づいて基本方針をつくり、これに沿って地方自治体が削減計画を策定。食品ロスの実態調査、消費者や企業への啓発活動、先進的取組みの顕彰と普及、賞味期限前の未使用食品を貧困家庭などへ贈る「フードバンク活動」支援などに取り組んでいる。ただ同法には罰則などの強制力がなく、実効性が課題となっている。
[矢野 武 2020年2月17日]
(原田英美 ライター/2019年)
出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報
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