飼い鳥(読み)かいどり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「飼い鳥」の意味・わかりやすい解説

飼い鳥
かいどり

人間に飼育される鳥のことで、狭義には愛玩(あいがん)用の鳥をさすが、広義には家禽(かきん)も含まれる。

 古来、人と鳥のつきあいは長い。飼い鳥は紀元前3000年ごろの遺跡にすでに現れている。ニワトリは4000年も前にインドや中国で、アヒルは2000年前に中国やローマで、ガチョウは5000年前にエジプトや中国などで飼われていたといわれている。初めは、食用として飼われたものであろう。しだいにそのほかの用途も生まれた。伝書鳩(ばと)は3000年前にローマで通信用として飼われ、タカ類は狩猟の道具として飼われるようになった鳥である。しかしその後、色彩の美しい鳥、優雅な鳥、かわいい鳥、さえずり声の楽しい鳥、人語をまねる鳥などが愛玩用として人に飼われるようになった。これらのすべてが広く飼い鳥とよばれることもあるが、多くは、卵肉用などの経済目的で飼育するニワトリ、アヒルなどを家禽とよび、カナリアブンチョウなどの愛玩用の鳥だけを飼い鳥と呼び分けている。さらに厳密には、愛玩用で籠(かご)あるいは禽舎の中で繁殖させること(巣引き)を期待する鳥のみを飼い鳥とする考え方もある。

[坂根 干]

品種

これらはみな人間に飼育されることによって自然に色彩に変化をきたし、あるいは人間の意志によって人間に都合のよいように色彩や形態の変化を実現させられたりしたものである。セキショクヤケイからニワトリに、さらにそのなかで、卵用では白色レグホン、ナゴヤコーチンなどが、肉用ではプリマスロックミノルカなど多くの品種がつくりだされている。マガモからはアヒルに、そのなかでアオクビアヒル、ペキンダック、カーキーキャンベルなどに、あるいはカワラバトから伝書鳩、食用鳩、クジャクバト、ポーターなど500以上の品種につくり変えられているのは家禽の例である。一方、カナリア諸島原産のカナリアからは巻き毛カナリア、リザードカナリアなど、コシジロキンパラからナミジュウシ、シロジュウシ、ミケジュウシ、ボンテンジュウシなど、いずれも多くの品種がつくられているし、セキセイインコからも数多くの品種がつくりだされているのは飼い鳥の例である。

[坂根 干]

飼育

飼い鳥の主力はフィンチとよばれるカエデチョウ科の小鳥で、そのうちでもカエデチョウ属、キンパラ属が中心となっている。ついでオウム科アトリ科ハタオリドリ科の鳥などに人気があり、ことにオーストラリア産、アフリカ産のものに極彩色のものや鳴き声のよい高級品が多い。

 飼い鳥のなかに洋鳥、和鳥ということばもある。元来外国に生息していた種を洋鳥、日本の山野に生息する種を和鳥とよぶ。和鳥の飼育が許可されるのは次のような場合に限られる。

(1)狩猟免許を受けた者が狩猟期間中に捕獲した狩猟鳥を飼育する場合。

(2)狩猟鳥以外の鳥ではメジロマヒワ、ウソ、ホオジロに限って都道府県知事の捕獲許可を受け、さらに捕獲した鳥の飼育許可を受けた場合。

(3)学術研究のため環境大臣の許可を受けた場合。

 鳥のみならず動物、植物など、すべて生物を育てることはなかなかの困難を伴うもので、愛情と格別の根気を必要とする作業である。したがって中途半端な気持ちでの飼育には着手せぬがよい。鳥は飛ぶという特殊な技能のために、身体各部の機関を極端といえるぐらい犠牲にしている。飼い主はそれらを補わねばならない。たとえば、腸が短いので、つねに水や餌(えさ)を補給できるようにしてやらねばならないし、保温のための羽毛はハジラミなどの寄生虫の発生を伴うので、飼育場所は清潔でなければならないし、水浴びや砂浴びも日課の一つとしてやらねばならない。

 餌には撒き餌(まきえ)とすり餌がある。撒き餌は主としてヒエ、アワ、キビなどを種類によって適宜混合量を変えて混ぜ合わせ、ときにアサ、ヒマワリの実、ナタネ、エゴマなどを用いることもある。たとえばフィンチにはヒエ6、アワ3、キビ1の割合で混ぜ、インコにはアサ、ヒマワリの実を副食として与え、カナリアにヒエ3、アワ3、ナタネ3、エゴマ1を混ぜるのは一例である。一方、おもに生き餌鳥に与えるすり餌は大豆(だいず)粉、米糠(こめぬか)、魚粉などと青菜を混ぜてすり込んだもので、魚粉の量によって三分餌、五分餌、七分餌などがある。メジロ、キュウカンチョウ、コウカンチョウなどの餌はその例である。撒き餌の鳥でも換羽期や繁殖期にすり餌を与えることもある。

 鳥籠や禽舎などはその鳥の習性を熟知してよく適合したものを考えねばならない。ことに運動不足にならないよう注意を要する。たとえば、観賞用のフィンチであれば金網籠、竹籠を使うが、繁殖用であれば庭箱とよぶ木製の飼育箱が便利であるし、ウズラやヒバリは飛び上がる習性があるので籠の高さを高くするか、上面を網にする配慮も要るし、オウムは嘴(くちばし)が強いので金網籠がよい、など種類によって、あるいは繁殖用か観賞用かによって鳥籠の選択も重要となる。

[坂根 干]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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