香取(読み)カトリ

デジタル大辞泉 「香取」の意味・読み・例文・類語

かとり【香取】

千葉県北東部にある市。早場米の産地で、酒・醤油の醸造が盛ん。香取神宮がある。利根川沿いの地域は水郷筑波国定公園に指定。中心地区の佐原さわらは利根川の河港として発達し、伊能忠敬の旧宅がある。平成18年(2006)3月に佐原市・小見川町山田町栗源くりもと町が合併して成立。人口8.3万(2010)。

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精選版 日本国語大辞典 「香取」の意味・読み・例文・類語

かとり【香取】

[一] 滋賀県、琵琶湖西岸の高島市勝野付近の古地名といわれる。
※万葉(8C後)一一・二四三六「大船の香取(かとり)の海に碇(いかり)下し如何なる人か物思はざらむ」
[二] 千葉県佐原市にある地名。成田線鹿島線分岐点。香取神宮がある。
[三] 千葉県の北東部の郡。下総台地東部、利根川下流南岸にある。

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日本歴史地名大系 「香取」の解説

香取
かとり

現佐原市香取に比定される中世の地名。香取神宮の鎮座地で、古代は「和名抄」にみえる香取郡香取郷の郷域にあったと考えられる。応保二年(一一六二)六月三日の香取社大禰宜大中臣実房譲状(香取文書、以下断りのない限り同文書)に「香取村」とみえ、大禰宜家領金丸かねまる名・犬丸いぬまる名の畠地計一四町四反余があった。元応二年(一三二〇)香取社の堀浚いの分担が決められ、「町分」で五丈、「まちの分」各一丈、計七丈の負担が定められており(同年四月二七日香取社宮堀分配目録写)、香取社の鳥居前には中心となる町場と、さらにその周辺にそこから発展した新しい町場二ヵ所が形成されていたと思われ、香取町のことと考えられる。至徳四年(一三八七)大禰宜大中臣長房は嫡子満珠丸(幸房)に「当社まち」を譲っている(同年五月一日大禰宜長房譲状)。応永六年(一三九九)大禰宜家など四家に伝えられる検注取帳が合せられて新たに検注取帳が作成され(同年五月日香取神畠検注取帳)、その最末尾には正慶二年(一三三三)四月一六日の香取大領麦畠検注取帳には記載されていなかった追野おいの村、さらに宮本みやもとの八町四反余の畠地が記載されており、南北朝期になって宮本の畠地も検注の対象になったものと思われる。

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改訂新版 世界大百科事典 「香取」の意味・わかりやすい解説

香取[市] (かとり)

千葉県北部の市。2006年3月佐原(さわら)市と小見川(おみがわ),栗源(くりもと),山田(やまだ)の3町が合体して成立した。人口8万2866(2010)。

香取市東部の旧町。旧香取郡所属。人口2万5399(2005)。利根川南岸にあり,町域の南部は台地が占める。中心集落の小見川は近世に小見川藩1万石の陣屋が置かれた地で,松平,土井,安藤,内田各氏ら譜代大名が支配した。また利根川水運の河港でもあり米の積出しやイワシの取引で栄え,近世後期には酒・しょうゆ醸造業もおこった。水運が衰えた明治後期以降は佐原に遅れをとり,周辺農村の小商業中心にとどまった。利根川沿岸低地は県内有数の穀倉地帯であり,台地では近年,施設園芸がふえている。1973年,利根川に小見川大橋が完成したのを機に茨城県の鹿島地区との関係が深まり,進出企業の社宅もつくられている。台地上には良文貝塚(史),阿玉台貝塚(史)など縄文時代の遺跡が多い。享保年間(1716-36)江戸で活躍した歌舞伎役者初世松本幸四郎,近代医学の先駆者の一人佐藤尚中の出身地である。JR成田線が通じる。

香取市南西部の旧町。旧香取郡所属。人口5190(2005)。町域は下総台地と太平洋に注ぐ栗山川河谷の低地からなる。江戸時代は幕府の馬牧油田牧が置かれた地で,明治以降開墾が進み,県内有数の畑作地となった。農業が主たる産業で,サツマイモを中心にサトイモ,ニンジン,ラッカセイなどの野菜栽培が盛ん。旧佐原市の商圏に属する。
執筆者:

香取市北部の旧市。北は利根川に面し,南は下総台地に広がる。1951年佐原町,香取町,東大戸村,香西村が合体,市制。人口4万5965(2005)。古代から香取神宮の神領として開けた地で,中世には利根川沿いに津が点々と存在し,津は香取神宮に供祭料を貢献して漁猟と交通の特権をえた海夫の基地となっていた。津は近世に河岸となり,中心の佐原は利根川水運の発展によってその河港として栄え,利根川下流一帯の米,肥料の集散地となり,酒,しょうゆ,みそなどの醸造業も発達した。また近世初期に市域北部の十六島の開発が始まった。佐原は1898-1931年の間は国鉄成田線の終点で,水運と鉄道の結節点の商業都市として発展し,のちに水郷大橋の架橋,JR鹿島線の開通,さらに東関東自動車道の開通(佐原香取インターチェンジが所在する)によって茨城県南部にも商圏が広がっている。水郷の中心地でもあり,与田浦に10万本のハナショウブが咲く水生植物園や大利根博物館(現,県立中央博物館大利根分館)があり,釣りの名所でもある。市内に伊能忠敬旧宅,忠敬の墓がある観福寺などがあり,夏に八坂神社,秋に諏訪神社で行われる佐原祭では山車(だし)が繰り出し,佐原ばやしが演じられる。
執筆者:

1304年(嘉元2)の香取文書に佐原の名がみえる。88年(元中5・嘉慶2)の同文書によれば市場が開かれていたことが知られ,14世紀ころにはすでに香取神宮の門前町の一つとなっていた。また応安(1368-75)ころの海夫注文(香取文書)には〈さわらの津〉があり,水運の要津でもあった。1590年(天正18)鳥居元忠が矢作に入城し,1602年(慶長7)奥州磐城平へ転封後は,天領,旗本領となった。43年(寛永20)に市場をめぐる争論があり,そのときの〈定〉によると,上宿,中宿,下宿に六斎市が立っていた。90年(元禄3)の幕府河岸調査で津出可岸(つだしがし)として認められた。1774年(安永3)には河岸問屋株が公認され,1740年(元文5)には高瀬船,艜船(ひらたぶね)など56艘の川船があって,近世中期より発達した醸造業の産物である酒,しょうゆ,水郷地帯の米を積み出し,江戸より諸物資を積み帰る河岸としても栄えた。1863年(文久3)水戸天狗党に襲われ,領主津田氏はこれに対抗できず,佐倉藩が出兵して鎮圧,その後は佐倉藩領となり明治に至った。
執筆者:

香取市南部の旧町。旧香取郡所属。人口1万0778(2005)。下総台地の東部にあり,町域の東部を利根川に注ぐ黒部川が流れ,その流域に水田が開ける。主産業は農業で,谷津田の米作と畑地でのサツマイモ,ラッカセイの栽培が中心であったが,近年はゴボウ,ニラなどの野菜,カーネーションの栽培が行われ,養豚,養鶏など畜産も活発である。北総東部用水により畑地灌漑が行われる。商業は振るわず,旧小見川町の商圏に属し,行政的にも旧小見川町とのつながりが強い。山倉の山倉大神は〈かぜなおしの神〉として知られる。宇賀神社境内の府馬の大クスは天然記念物に指定されている。
執筆者:

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「香取」の意味・わかりやすい解説

香取
かとり

千葉県北東部、香取市の一地区。利根(とね)川下流に位置し、下総(しもうさ)国一宮(いちのみや)の香取神宮の門前町。JR成田線と鹿島線(かしません)の分岐点。香取神宮は武神として江戸時代には幕府の保護を得、鹿島神宮、息栖(いきす)神社を巡る三社詣(もう)でが盛んであった。

[山村順次]


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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「香取」の意味・わかりやすい解説

香取
かとり

(1) 初代 旧日本海軍の戦艦。 1906年イギリスで竣工。基準排水量1万 6000t,速力 18.5kn,主砲 12インチ (30cm) 砲4。 21年皇太子訪欧の御召艦となった。 (2) 2代 旧日本海軍の練習巡洋艦。 40年竣工。基準排水量 5890t,速力 18kn,主砲 14cm砲4。 44年2月 17日,トラック島北方の海上で沈没。 (3) 海上自衛隊の練習艦。正式名『かとり』。基準排水量 3350t,速力 25kn,備砲 76mm砲4,対潜ロケット4連1,魚雷発射管3連2を装備。

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[日本酒・本格焼酎・泡盛]銘柄コレクション 「香取」の解説

かとり【香取】

千葉の日本酒。酒名は、地元の香取神宮からとり命名。生もと造りの無ろ過純米酒。精米歩合80%の「純米80」と精米歩合90%の「純米90」がある。原料米はコシヒカリ、出羽燦々など。仕込み水は蔵内の井戸水。蔵元の「寺田本家」は延宝年間(1673~81)創業。所在地は香取郡神崎町神崎本宿。

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デジタル大辞泉プラス 「香取」の解説

香取

日本海軍の戦艦。香取型戦艦の1番艦。準弩級戦艦。イギリスで建造され、1906年6月に竣工、同年8月に横須賀に到着。1921年の皇太子(のちの昭和天皇)の欧州訪問時には御召艦をつとめた。ワシントン海軍軍縮条約により廃艦が決まり、1924年に解体された。

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