馳星周(読み)ハセセイシュウ

デジタル大辞泉 「馳星周」の意味・読み・例文・類語

はせ‐せいしゅう〔‐セイシウ〕【馳星周】

[1965~ ]小説家北海道の生まれ。本名、坂東齢人としひと。「不夜城」で小説家デビュー。続編の「鎮魂歌」で日本推理作家協会賞受賞。「少年と犬」で第163回直木賞を受賞した。他に「漂流街」「夜光虫」「ダーク・ムーン」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「馳星周」の意味・わかりやすい解説

馳星周
はせせいしゅう
(1965― )

小説家。本名坂東齢人(ばんどうとしひと)。北海道生まれ。横浜市立大学文理学部卒業。在学中は、新宿にある書評家内藤陳(1940―2011)経営の酒場「深夜+1(プラスワン)」でバーテンダーのアルバイトをしていた。3年半の出版社勤務の後フリーとなり、コンピュータ・ゲームのレビューや書評、古神陸(こがみりく)名義での、ヤングアダルト向けのアクション小説を執筆。1991年(平成3)から6年あまり本名で連載していた『本の雑誌』の書評は、のちに『バンドーに訊(き)け!』(1997)として刊行され、馳星周の原点とも謳(うた)われる。1996年、馳星周名義による初の長編小説『不夜城』を発表。翌年、吉川英治文学新人賞、日本冒険小説協会大賞を受賞。また第116回直木賞の候補ともなり、一躍注目を浴びる。日本人と台湾人の混血主人公劉健一が、新宿歌舞伎町を血に染める中国系マフィアの抗争に巻き込まれながら、策謀の限りをつくして、したたかに生き残りを図る犯罪小説で、年末恒例の各種ベストテン投票で軒並み1位を獲得した。『鎮魂歌 不夜城』(1997。日本推理作家協会賞)は続編だが健一は脇に回り、より暴力的な描写が増え、物語も絶望的なものとなっていく。これ以後も、台湾に渡った日本人野球選手が八百長試合に巻き込まれていく『夜光虫』(1998)、日系三世のブラジル人の苦悩暴発を描く『漂流街』(1998。大藪春彦賞)、渋谷の街に巣くうチーマーたちの生態を描く『虚の王』(2000)など、ニュータイプのクライムノベルを次々と刊行、独自の路線を築き上げる。2001年の『ダーク・ムーン』では北米バンクーバーを舞台に、国籍も立場も異なる3人の警察関係者たちが心の闇を彷徨(さまよ)うさまが描かれ、またひとつ新境地を開拓した。趣味のサッカー関連の著書も多く『蹴球中毒 サッカー・ジャンキー』(1999、金子達仁(1966― )との共著)、『欧州征服紀行』(2002)などがある。

[関口苑生]

『坂東齢人著『バンドーに訊け!』(1997・本の雑誌社)』『『ダーク・ムーン』(2001・集英社)』『『欧州征服紀行』(2002・角川書店)』『『不夜城』『鎮魂歌 不夜城』『夜光虫』(角川文庫)』『『漂流街』(徳間文庫)』『『虚の王』(カッパ・ノベルス)』『馳星周・金子達仁著『蹴球中毒 サッカー・ジャンキー』(文春文庫)』『千街晶之著『ミステリを書く!』(小学館文庫)』

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デジタル版 日本人名大辞典+Plus 「馳星周」の解説

馳星周 はせ-せいしゅう

1965- 平成時代の小説家。
昭和40年2月18日生まれ。はじめ本名でミステリー評論をかく。平成8年中国系マフィアの暗闘をえがく「不夜城」でデビューし,吉川英治文学新人賞。10年「鎮魂歌」で日本推理作家協会賞,11年「漂流街」で第1回大藪春彦賞をうけ,暗黒小説というジャンルを定着させた。27年「アンタッチャブル」が6度目の直木賞候補になる。北海道出身。横浜市立大卒。本名は坂東齢人(としひと)。

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