験の杉(読み)しるしのすぎ

精選版 日本国語大辞典 「験の杉」の意味・読み・例文・類語

しるし【験】 の 杉(すぎ)

① (験杉) 京都市伏見区の稲荷(いなり)神社にある神木の杉。参詣者が折り帰った杉の枝を植え、久しく枯れなければ祈願しるしがあったとした。
蜻蛉(974頃)上「いなりやまおほくのとしぞこえにけりいのるしるしの杉をたのみて」
② 道をさがす目じるしとなる杉。特に「古今集‐雑下」にある「我が庵(いほ)三輪の山もと恋しくはとぶらひきませ杉立てる門(かど)〈よみ人しらず〉」の歌と伝説にちなんだ、奈良県桜井市の大神(おおみわ)神社の杉をいう。
躬恒集(924頃)「ゆきのうちにみゆるときははみわやまのやどのしるしのすぎにぞありける」
③ (酒の神をまつる大神(おおみわ)神社で、杉を神木とするところから) 酒屋軒先に杉の葉を集めまるめてかけ、看板としたもの。さかばやし。
※俳諧・犬子集(1633)一五「しるしの杉ぞ尋かねたる 暮ぬれば酒屋の門をわすれ果〈重正〉」

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デジタル大辞泉 「験の杉」の意味・読み・例文・類語

しるし‐の‐すぎ【験の杉/標の杉】

杉の葉を集めて丸くし、酒屋の軒にかけてしるしとしたもの。さかばやし。
伏見の稲荷神社にある神木の杉。参詣者がその枝を折って帰り、久しく枯れなければ願いが成就するとされた。
御堂の方より、すは、稲荷より賜はる―よとて」〈更級

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世界大百科事典(旧版)内の験の杉の言及

【スギ(杉)】より

…【浜谷 稔夫】
【民俗,伝承】
 《万葉集》に〈神奈備(かんなび)の三諸(みもろ)の山に斎(いわ)ふ杉〉とよまれているように,杉はまっすぐ高く伸びる目だつ木であるから,古くから神を祭る神聖な木とされた。大和の三輪明神の神杉や京都の伏見稲荷の験(しるし)の杉は神木として有名だが,このほか,大杉神社,老杉神社,杉山神社などの神社名や杉本,杉下などの地名に杉をちなんだものが多く,これらも杉を神木としたり杉のもとで祭りをしたなごりと考えられている。三輪や伏見に参った人は,杉の小枝や杉苗を持ち帰り,それが根づくと神の加護のあった印とする風があった。…

【伏見稲荷大社】より

…以後秦氏が代々禰宜(ねぎ)・祝(はふり)となって仕えた。世に〈験(しるし)の杉〉と称し,この神に祈る者がその木を植えてつけば福を得,枯れれば福がないという。 942年(天慶5)ころ正一位の神階が授与され,《延喜式》では名神大社に列し,祈年・月次・新嘗の案上ならびに祈雨の官幣にあずかり,後三条天皇以降歴代天皇の行幸があった。…

※「験の杉」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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